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2016年1月25日 (月)

透明な三隅研次

週末に朝から卒論を立て続けに5、6本読んでいたら、気が滅入ってきた。4万字=400字原稿用紙で100枚以上が規則だが、倍近いものもある。つまらないと、審査の日に厳しい言葉を発する自分を想像して嫌になってくる。気分を変えようと、フィルムセンターで三隅研次を見ることにした。

たまたま上映していたのが『千姫御殿』(1960)。最初は何を言いたいのかわからない映画だなと思っていたが、30分ほど過ぎて喜八郎役の本郷功次郎が出てきたあたりから、だんだんと調子に乗ってきて、ラストには見事にはまってしまった。

物語は、山本富士子演じる千姫が幕府から送られた隠密の喜八郎に出会って真実の愛を知るが、その恋は幕府によって阻まれるというもの。映画は、千姫が若い男を連れ込んでは殺すという噂が立っているところから始まる。実際3人が殺されるが、それは陰謀だったことを幕府から隠密で送られた喜八郎は悟ってゆく。

後半はあれよあれよと進む。山田五十鈴演じる千姫の側近・如月が実は陰謀の中心だったとわかったり、恋人を千姫に殺されたと思って仇を取ろうとしたおかつ(中村玉緒)が、後半は喜八郎と千姫のために尽くそうとしたり、なかなか芸が細かくて、見ていて気持ちがいい。

自害を命じられた喜八郎の手紙を、おかつが出家を覚悟して髪を切った千姫に届けるラストが実にドラマチック。庭には雪の降る廊下を、覚悟を決めた白装束の千姫が無言でしずしずと進む。おかつは手紙を届けようと声を上げるが、受け取らない。とうとう庭で読みだすと、そのあからさまな愛の告白に千姫は駆け寄って自分で読む。それはいつの間にか喜八郎の声になる。

なんのてらいもなく、するすると進む演出は透明感が溢れている。大映京都撮影所のセットも見事で、千姫御殿の銀を使った屏風など豪華絢爛。脇役の中村鴈治郎(徳川家康役!)や志村喬も渋い味を見せる。やはり日本映画の黄金期は何を見てもおもしろい。とにかくフィルムセンターの三隅特集は、これからできるだけ足を運ぼうと思った。

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