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2016年1月15日 (金)

近美の常設展で建築を考える

最近、どんどんおもしろくなっているのが、竹橋の東京国立近代美術館と木場の東京都現代美術館の常設展。かつてのように所蔵する代表作を時代順に展示させるのではなく、何らかのテーマ性を持たせることで、見慣れた作品を別の角度から照らし出している。先日「ようこそ日本」展を見た東近美の常設もおもしろかった。

例によって4Fから見るが、ここ最近、最初の部屋は「ハイライト」として代表作を並べている。今回驚いたのは奥の正面に当たる一番いい場所に藤田嗣治の2点があったこと。《五人の裸婦》(1923)はわかるが、《アッツ島玉砕》(1943)を横に並べるとは。

この作品はなかなか展示されなかったので、2008年の「藤田嗣治展」で初めて見たが、昨年はとうとう藤田の戦争画14点の全点展示もあっておなじみになった。昨年は常設展でもこの展示期間は相当賑わっていた。中でも一番の力作が《アッツ島玉砕》だろう。

それが今年になったら「ハイライト」、つまり東近美の代表作になってしまった。こうして戦争画に抵抗がなくなっていけば、近いうちに東近美所蔵の戦争画全点展示もできるだろう。

20年を隔てた藤田の2点を並べて見ると、意外な共通点が見出せる。つまり裸に近い人間の群像。それまでの美術とは違った観点から人間存在に迫ろうとした画家の執念が見えてくる。

《アッツ島玉砕》は、よく見ると日本兵もアメリカ兵も描いている。アメリカ兵だからといって特に鬼畜のように描くのではなく、どちらも入り混じった血みどろの戦いという感じ。少しだけ日本兵の方が勝っているようだけど、少しだけ。

「ハイライト」の終わりのクレー2点とセザンヌ1点も良かった。これは日本人の個人コレクションを購入したもののようだが、これだけのクオリティが日本でいつでも見られるとは。

「ハイライト」の説明が長くなったが、常設展のテーマは「ちょっと建築目線で見た美術、編年体」。現れる家や建築物を描いた絵画を中心に、明治から現代まで。建築物自体は展示できないので写真になるけれど、関東大震災後のモダン都市ぶりとか、戦後の丹下健三に代表されるコンクリート建築、そして安藤忠雄や伊東豊雄の閉じられた建築まで、それに近い精神で作られた作品が並ぶ。

もっと建築の説明があっても良かったと思うが、なかなかおもしろかった。現代日本の建築や美術は、とにかく1995の神戸大震災と2011の東北大地震の2つに色濃く影響されている。宮本隆司の神戸の写真やChim↑Pomの福島を舞うカラスのビデオ映像を見ながら、強く思った。

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