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2016年2月10日 (水)

普通におもしろい『オデッセイ』

リドリー・スコット監督の『オデッセイ』を劇場で見た。最近はSF映画が好きになったし、この監督ならばある程度以上の質は期待できると思ったから。今度のアカデミー賞の7部門にノミネートだし。

結果は、予想とはちょっと違った。この監督は『エイリアン』(79)の昔から最近の『プロメテウス』(12)まで濃密な謎やドラマを張り巡らせてきたが、今回の物語は拍子抜けするほどシンプル。火星探検で置き去りにされた宇宙飛行士が生き延びて救出されるまでを、普通にドラマチックに描く。

普通だと味方だと思った人物が実は、という展開があるが、今回はみんなわかりやすい。というより、出てくる人間はNASAの長官に至るまで全員善人で、それぞれがまじめに全力を尽くす。そのうえ、ルイス船長(ジェシカ・チャスティン)が機内に残したという設定だが、明るくディスコ調の音楽ばかり流れる。

それでもおもしろいのは、火星に残されたマット・デイモン演じるマークが、いろいろな工夫を重ねて何とか生き延びていくさまがコミカルに描かれているから。酸素や水を作り、ジャガイモまで育ててしまう。1997年に残された宇宙船を見つけて、静止画の形で地球との交信を始めてゆく過程は見ていてなんとも嬉しくなる。

メールの形での交信が可能となると、今度は彼の救出作戦が始まる。NASAのメンバーたちがきちんと描き分けられていてだんだん応援したくなるし、後半は帰還中の船長を始めとするクルーの活躍が始まる。とりわけこの監督らしく、女性たちの頑張りが目立つ。

なかでも船長を演じるジェシカ・チャスティンが、クールでありながら思いやりと勇気があって何とも頼もしい。最後に自分がリスクを取る決断をするシーンなんて惚れ惚れしてしまう。そして大宇宙のなかで無事に救出されるシーンに泣いてしまう。

最近のハリウッド映画は中国や中国人への配慮が目立つが、この映画でも後半に出てきた。中国の宇宙技術が役に立つというものだが、ちょっと唐突だったし、わざとらしい。しかしこれで中国の興収がぐっと伸びるだろうから、今のハリウッドにとっては大事なことなのだろう。

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ストーリーは超シンプル過ぎるくらいの「一発物」 (火星に探査に行ったクルーのうち、一人だけ取り残され=写真、孤軍奮闘した結果、遂には帰還に成功?) なので、正直どうか?!と事前は思っていた。 ところが見終わって、最初に思ったのは… 「流石、リドリー・...... [続きを読む]

受信: 2016年2月10日 (水) 23時37分

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(ネタバレはストーリー紹介の後の「以下ネタバレ注意」表記以降からです) 面白かった!この映画大好き! 絶望的なサバイバルが最新科学技術や現実に基づいたリアリティ重視で描かれるにも関わらず、この地に足の着いたエンターテイメントが観客に示してみせるのは、科学と人類の進歩のポジティブな面。観た後に明るく前向きな気持ちになりました。 観終わって買い物中の嫁と合流し「...... [続きを読む]

受信: 2016年2月25日 (木) 00時52分

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