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2016年2月 5日 (金)

パリのシネマテークを告発した22歳の女性

フェイスブックは1日1回は見ている。時々おもしろい情報が流れているから。昨日、パリのシネマテーク・フランセーズ館長を辞めたばかりのセルジュ・トゥビアナ氏が、そこの受付で働いていた女性の告発ビデオについて触れていたので気になって検索してみた。

既に「リベラシオン」紙のニュースになっており、そのサイトからのリンクで13分ほどの動画が出てきた。話しているのは22歳の若い女性。後ろにはゴダールの写真が貼られていて、シネマテークのIDカードを横にさげて、制服のまま正面を向いて語る。固定カメラだから自分1人で撮ったのかもしれない。

彼女は22歳の学生で、憧れのシネマテークで働きたいと思い、3年前に派遣会社経由で受付に採用されたという。ところがその契約は不安定で、少しでもミスがあると同僚はその日のうちに辞めさせられた。彼女も昨年9月に理由なく辞めさせられて、館長交代の時期にこの動画を発表したようだ。

おもしろいのは、自分たちはフリッツ・ラングの『メトロポリス』の労働者のようだと言ったり、シネマテークの正職員たちはダルデンヌ兄弟の映画の人物のように「見て見ぬふり」をしていると言うくだりだろう。さすが映画ファン。動画は新館長への「スターと握手するばかりでなく、受付も人間なので挨拶くらいしてください」というメッセージで終わる。

こんなことは、よくある話だろう。日本のフィルムセンターだって受付や券売は外注の派遣だし。フランスらしいのは、これを敢えて発表することだろう。そしてそれをマスコミがニュースにすることも。あの国では「権威に逆らう」ことが一つの価値として認められていると思う。トゥビアナ氏は「自分に直接話して欲しかった」と書いているが、何となく歯切れが悪い。

シネマテークの受付と言えば、30年ほど前にまだシャイヨー宮の地下にあった頃のロドルフ君を思い出す。1986年夏のことだが、青い目の美少年の彼はもぎりのバイトをしていて、私のチケットを切らなかったから何回でも使えた。つまり無料。彼は私が当時付きあっていたMさんの元カレで、彼女が「この人に親切にして頂戴ね」と頼んでいたという次第。

それから10年たって、1996年にルノワールの映画祭の交渉のためにシネマテークに行ったところ、まだロドルフ君はいた。少し立ち話をしたが、正職員になっていた。「お互い定職が見つかってよかった」と肩をたたきあった。

今も彼はいるのだろうか。15年ほど前にベルシーに移転してからのシネマテークは、ロドルフ君には似合わない気がする。私にとってのシネマテークは、外注もなかったのどかな時代のシャイヨー宮だ。

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