コーエン兄弟の新境地
5月13日公開のコーエン兄弟監督『ヘイル、シーザー!』を見た。ジョージ・クルーニー、スカーレット・ヨハンソン、ティルダ・スウィントン、チャニング・テイタム、ジョシュ・ブローリンといった豪華スターたちが、1950年代のハリウッドの内幕物を演じるというのだから、早く見たくなった。
結果は、「さすが才人のコーエン兄弟」といったところ。場面は目まぐるしく移り変わり、誰かに感情移入するのは難しいし、話は入り込んでいてわかりにくい。それでも細部のエピソードはどれもおもしろく、かつ50年代の歴史ものやミュージカルの撮影シーンには感動さえする。
主人公(というか舞台回し)は、映画会社キャピトル・フィルムの重役マニックス(ジョシュ・ブローリン)。彼は製作に関わるあらゆる問題を解決するのが仕事。早朝から深夜まで、スターの恋愛スキャンダルに始まって、有名監督とスターとの諍いやスターの引き抜きなど、すべてを一つ一つ解決してゆく。
そんな日々に大問題が起きる。古代ローマを舞台にした大作『ヘイル、シーザー!』撮影中に、大スターのウィットロック(ジョージ・クルーニー)が突然姿を消してしまう。そしてそれをかぎつけた女性ジャーナリストの姉妹(ティルダ・スィントンが二役)が騒ぎ出す。
そんな展開だが、とにかく各場面が楽しい。スカーレット・ヨハンソンが水中ダンスを見せるシーンはバスビー・バークレーの振り付けそのものだし、チャニング・テイタムが水夫姿で歌って踊るシーンは、『雨に歌えば』のジーン・ケリーを思わせる。
ジョージ・クルーニーの蒸発事件が、実は共産主義者がたくらんだものだというのも時代を思わせる。そこに出てくるマルクーゼ博士はたぶんドイツ出身で戦後新左翼の旗手になったヘルベルト・マルクーゼのことだろう(プレス資料にはないが)。そしてそこにチャニング・テイタムまでからんでくるからおかしい。
一方で有能なマニックスは、ロッキード社から転職の誘いを受けているというのも、この時代らしい。最初はこの役のジョシュ・ブローリンが官僚的で嫌な奴に見えるが、だんだんと人間的でかつ有能な男に見えてくるから不思議。
そんなこんなで、コーエン兄弟の新境地を十分に楽しんだ。
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