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2016年3月 7日 (月)

美術以外の展覧会:その(2)「オートクチュール」展

先日書いたのは「キューバの映画ポスター展」なので、いかにポスターが日本と違うとはいえ、映画の話である。今日書くのはファッションの展覧会なので、門外漢も甚だしい。それでも三菱一号館美術館で始まったばかりの「PARIS オートクチュール」展はかなりおもしろかった。

もちろん、19世紀後半から約100年のオートクチュールの歴史を一挙に見る楽しみはある。作品は3万点の衣装を持つガリエラ宮パリ市立モード美術館の7000点を超えるオートクチュール・コレクションから選ばれた約130点。もちろんカルダンとかシャネルとか私でも名前を知っている衣装も並ぶ。

それよりもすごいと思ったのは、展示空間にこれらの衣装がピッタリあっていたことだ。19世紀末にジョサイア・コンドルが設計した建物を復元したこの美術館は、それぞれの部屋は広くないし、天井も高いとは言えない。いわば貴族の館のような感じだが、それが1点1点の個別の注文からできたオートクチュールの特別な感じとよく合う。

そのうえ、会場を思いきり暗くして、最新のLED照明で衣装を浮かび上がらせている。衣装がならんでいるだけなのに、いつのまにか動き出しそうなドラマチックな効果を生み出していた。

個人的に一番いいと思ったのは、1924年のマドレーヌ・ヴィオネの黄緑のイヴニング・ドレス。軽やかで直線的でありながら優美なラインや金の模様は、「狂乱の時代」そのもの。マン・レイなどのシュルレアリスム映画に出てくるキキなどが着ている衣装だ。あるいは藤田嗣治の描く絵画にも出てくるか。

30年代になると、丈が長く、黒や紺の贅沢なドレスが広い部屋にずらりと並ぶ。それらにインスピレーションを受けた最近のゴルチエやアライアのドレスがその横にあるのもいい。

名前を聞いただけでよく知らなかったが、今回気になったのがバレンシアガ。52年の金のショールをまとった黒いドレスや67年のいかの形をしたピンクのドレスなどの優美さといったら。ディオールやカルダンのモダンさよりも好きだった。こちらは映画などで見たし。

よく知らないことを書いたけれど、こうした衣装の博物館は日本でも必要だと思う。江戸時代の小袖などは東京国立博物館にあるけど、1930年代東京のファッションなんてどこにも保存されてないのではないか。ミュージアムを「美術」から取り戻して、人間の歴史を保存する場所にしないといけない気がする。

「オートクチュール」展は5月22日まで。

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