村上隆のコレクション展にうなる
美術展で久しぶりに驚いたのが、横浜美術館で4月3日まで開催の「村上隆のスーパーフラット・コレクション」展。まえにここで「村上隆の五百羅漢図展」(すでに終了)について書いたけれど、村上の所蔵コレクション展まで見る必要はないかなと思っていた。
ところがこれがすごい。まず入口の無料ゾーンにある巨大なアンゼルム・キーファーの作品に驚く。右側の展覧会入口近くの傾斜にも大きな立体がいくつも並んでいる。
展示室に入ると、曽我蕭白や白隠、仙厓などによる水墨画。反対側には縄文土器から清や李朝の陶磁器などごっそりと並ぶ。こちらは量が多い。それが見ていると、いつのまにか現代の欧米の陶芸になっている。あるいは魯山人。
次は右側にアトリエを模した大きな参加型の作品。デッサンを描いている観客が何人もいた。そして左の展示室は「村上隆の脳内世界」と銘打って、アンティーク家具や雑貨や陶磁器やおもちゃがうずたかく積まれている。奥には運送用の木箱もある。
そして次は現代美術。アンディ・ウォーホールにヘンリー・ダーガー、ガブリエル・オロスコ、そして日本のアラーキーや奈良美智。本当に所狭しと並んでいる。そもそも通常の企画展よりも会場が広く、常設展会場が狭くなっているほど。
この後に常設展を見ると、きちんと展示されてあって、何だか物足りなかった。たぶん村上コレクション展に合わせて、かなり現代美術中心にしていたようだが、それでも真面目すぎる。
いやはや、何でも飲み込むウワバミのような村上隆のパワーを全身に浴びた気分。考えてみたら、いわゆる近代絵画はない。普通の美術ファンが一番好きな印象派などは一切ないし、近代の日本画もない。古代、中世から一挙に現代へ。それを無秩序に、大量に並べる。その数は1000点を超すというが、展示リストもカタログもないのでわからない。
正直なところ、「村上隆の五百羅漢図」展よりおもしろかった。あるいはこの2つの展覧会を合わせて村上ワールドとしてとらえるべきだった。村上展を見ていなくても、美術が苦手でも、ぜひ見てほしい。横浜は遠いがその価値は十分にある。個人的には、渡仏前にいいものを見たと思った。
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