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2016年3月 1日 (火)

最終日の「恩地孝四郎展」

何となく3月末まで開催と思っていた東京国立近代美術館の「恩地孝四郎展」が最終日だと日曜の朝に知り、時間もなかったので、駆け足で見てきた。もともとこの人のヘタウマのような木版画にあまり興味はなかったが、さすがにこの美術館の個展だと見ごたえがあった。

最初は油絵の自画像から始まるが、その後は小さな木版画がびっしりと並んでいる。版画だけで約260点、これに油絵11点、水彩・素描27点、写真20点、ブックデザイン70点。ゆっくり見たら、ものすごい時間がかかるだろう。

私は時間もなかったのですいすいと見ていったが、一番思ったのは、この人は幸せな芸術家生活を送ったのではないかということ。1891年生まれで、大正教養主義の頃に版画家として確立し、和洋折衷の不思議な木版画を確立してゆく。

具象と抽象が融合し、モダニズムと和風が自然に共存している。まるで呼吸をするようにドローイングを描き、木版画を掘る。人の顔を描いたり、具体的な音楽に影響を受けた抽象的な版画を作ったり、本や雑誌の表紙を描いたり。もう自由自在な感じ。

戦争中は中国に行って版画を作っているが、戦意高揚的なものは見当たらない。年齢的にもそれが許されたのだろうか。どこに行っても日常を見つめているだけ。『博物誌』という本では、自分で撮った昆虫などの写真に自分で解説を書いていた。写真もプロの腕前。

戦後は海外で日本の木版画が人気が出たこともあって、「版画大国日本」の代表選手として、サンパウロ・ビエンナーレなどにも出ている。だからシカゴ美術館とかホノルル美術館とか海外からの出品も多い。日本国内も本当に多くの美術館から作品が出ている。

見終わって、何となく気分が良くなったのは、大正、昭和と生きた幸福な芸術家の姿を垣間見たからだろう。だからどうということはないが、幸せな時間を持てた。展覧会は、見たいと思ったら短い時間でも見た方がいいと痛感。

この展覧会は4月から和歌山県立近代美術館に巡回。

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