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2016年3月28日 (月)

パリに着いても日本の話:その(3)東洋文庫と奥村土牛

今日はイースターで休日。エールフランスからは連絡がないので、また日本の話をする。名前はよく聞くのに一度も行ったことがない施設が「東洋文庫」。その所蔵する本が確か平凡社からシリーズで出ていたし、ときおり展覧会でも所蔵先として見たことがあった。ある時、「解体新書展」のチラシをどこかで入手したので、行ってみた。

駒込の六義園のそばにあるが、ずいぶん立派な建物だった。国会図書館の分館まである。「解体新書展」は、「ニッポンの医のあゆみ1500年」という副題で、4月10日まで開催している。

展示は2階からで、天井まである豪華な書庫に驚く。四方が本棚に囲まれていてヨーロッパの個人の邸宅のようだが、その手前に展示がしてある。

『古事記』」から始まって、中国医学を日本に広める医学書が続く。江戸時代になって、西洋医学が入ってくる。『解体新書』の前にもいくつも本がある。江戸時代に人々を襲った伝染病は、コレラ、麻疹、梅毒、天然痘など。そのほか、白米になって玄米にあったビタミンB1が失われ、脚気が流行ったという。

コレラが流行する町を描く版画などすさまじい。あるいは博物学的な魚や動物、植物の図は見て楽しい。漢方にもつながっている。私が好きな『養生訓』もある。

そうして内臓の絵などがあって、『解体新書』につながってゆく。一番おもしろかったのは『江戸買物独案内』。江戸のシッピングガイドで、食べ物屋から布地、武具、釣り道具など掲載点数2600あまり。解説によると、広告料をとっていたという。

なぜこの本が展示されているかというと、薬屋の数が多いから。二日酔いに効く「黒丸子」とか育毛剤の「髪生薬」とかなんでもある。「団十郎歯磨き」のようなスターの名を取ったものもあって、楽しかった。本当は図書館も見たかったが、時間切れ。最近は美術よりもこうした博物学が好きになった。パリの人類博物館に行こうかな。

「奥村土牛展」は山種美術館で5月22日まで開催中だが、この美術館の十八番とでもいうべき展覧会。派手さはないが、品が良くてうっとりする。《醍醐》や《吉野》の桜は最高だし、《兎》や《軍鶏》、《鹿》といった動物もいい。

正直なところ、《姪》や《稽古》や《舞妓》など、人物はどうもピンと来ない。彼特有のヘタウマが妙な方向に行ってしまう。やはり風景や動物の方が好きだ。私は渡仏前の最後の展覧会としてこれを選んだが、清らかな気持ちになった(気がする)。だけどパリに来てエールフランスと喧嘩したら、そんな気分はどこかに吹っ飛んだ。

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コメント

いつも楽しみにみています。映画の事レストランの事美術館の事など、あー、そういう風に
観たり考えるのかと、為?になります。特にこんかいのフランスの事、同時紀行文の様で
たのしみです。お忙しい事と思いますが是非続けてくだい。お身体、充分留意して!。

投稿: rakkirakki | 2016年3月28日 (月) 17時18分

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