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2016年3月 2日 (水)

ようやく『マンガ肉と僕』を見た

杉野希妃監督の『マンガ肉と僕』をようやく劇場で見た。彼女は女優やプロデューサーとして知られているが、これが最初の監督作品。その後に作った『欲動』に妙な魅力があったので、ぜひ見てみたいと思った。

2014年の作品で確かその年の東京国際映画祭に出ていたから、1年半もたってようやく公開となった。私はこの題名を見た時から、そのふざけた感じが気になっていた。

「マンガ肉」とは、マンガで描かれるような、骨付きのでかい肉のこと。映画は毎日マンガ肉を食べる太った女子学生のサトミと彼女につかまった気の弱い法学部の新入生ワタベの出会いから始まる。最初にサトミが出てきた時にはびっくりした。やせた美人の杉野希妃が、病的に太った姿で現れたから。特殊メイクもしているだろうが、動作や雰囲気が太った困った女そのものだった。

ワタベを演じるのは三浦貴大で、いつの間にかサトミは彼のアパートに住みつく。三浦は情けないがまじめで優しい男にぴったり。サトミに言われるままに、肉を買いに行く。この2人の生活はグロテスクだが、笑っていいのか悲しんだからいいのかわからず、どこかピンとこなかった。

すると突然「3年後」に移り、ワタベは今度は恋愛依存症の菜子(徳永えり)と同棲している。3年前にバイトで知り合っていた女性だが、まさか一緒になっているとは。彼女の母親は娘が将来「弁護士の妻」になると信じて、生活費を出し、ワタベはそれに寄生している。ところが菜子は精神に異常をきたす。

そしてまた突然「5年後」。ワタベは5年前に会った法学部の先輩のさやか(ちすん)と一緒に住んでいる。ワタベは弁護士を諦めて司法書士になり、さやかはまだ弁護士を目指している。ある時、ワタベの消息を聞いて会いに行く。

見終わってみると、自分の生き方を模索する3人の女のすさまじい格闘の物語であり、それが1人の平凡な若者を通じて語られていたことに気がつく。ありえないように見えた話が実はリアルで、日本のジェンダーの問題を鋭く突く。

撮影(高間賢治)は丁寧で、京都の街並みや小さな川や橋を繊細に描き出す。音楽も含めてちょっとやり過ぎで観光映画的になっているのは、『欲動』のバリ島と同じ。それもまた魅力的ではあるが。

杉野希妃は『欲動』でも思ったが、才能はあるのだから今度はもっと普通の脚本で撮った作品を見てみたい。たぶん、彼女は出ない方がいいかもしれない。

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