『ルーム』の巧みさ
4月8日公開の『ルーム』の試写を見た。さほど知られていない監督なのにアカデミー賞で主演女優賞を取り、作品賞、監督賞、脚本賞といった主要賞にノミネートされていたから。開始時間の35分前に着いたが、長蛇の列。
予告編は劇場で1度見たくらいであまり印象に残っていないし、予約なしなので上映5分前に再集合でギリギリで入れたので、チラシを見る余裕もなかった。だからその展開に、ただただびっくりした。
最初は、母と子の暗い生活を映す。次第にそれが狭い部屋の一室であることがわかる。窓は天窓1つで、夜中に男がやってきて、食料を渡す。その間、息子は衣装棚に閉じ込められる。どうも、息子はそこで生まれて、5年間もいるらしい。
15分ほどで、つまりは監禁された母子の話だとわかる。118分このままだとつらいなと思うが、だんだんおもしろくなる。45分ほどで、母は息子を外に出す作戦を立てて、それがまんまと成功する。「ルーム」から「世界」へ出た母子は、次々と思いがけない障害に会う。
見ていて、いたたまれない。とにかくこの母子が幸せなって欲しいと思うが、そう簡単ではない。マスコミ、弁護士、両親など次から次にやってきて、摩擦を起こす。どうなるかと思ったが、終わりにホッとした。
とりわけ少年の視点から見た「ルーム」と「世界」が興味深い。当たり前だが、子供から見たら、とりわけ5年間も監禁されてそれが日常になった子供にとって、「世界」は驚異の連続だ。映画というのが新しい世界の見方を教えてくれる道具だということを改めて感じた。
その意味でこの映画は、あるようでない、巧みな構造を持っている。監禁という、世界各地で発生している事件をうまく料理したと思う。トロント映画祭観客賞からアカデミー賞という流れにぴったり。レニー・アブラハムソンというアイルランド出身の監督は既にキャリアのある監督らしいが、これから大いに活躍するのではないか。
母親役のブリー・ラーソンがアカデミー賞の主演女優賞という。うまいと思うが、個人的には『キャロル』のケイト・ブランシェット。まあ、それはしかたがない。
超満員のギャガの試写室から帰ったら、急に寒気がして体調が悪くなった。映画のせいではあるまいが。
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