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2016年4月20日 (水)

よくしゃべる映画2本

ホセ・ルイス・ゲリンの『ミューズ・アカデミー』L'academie des musesをサン・ミシェルの劇場で見た。この監督は『シルヴィアのいる街で』が東京国際映画祭で上映された時に、蓮實重彦氏が「ビクトル・エリセが絶賛」という噂を広げて、急に注目された。それ以降、日本で彼の映画は映画祭を含めると、ほとんど上映されている。

この作品も去年の東京国際映画祭で上映された。最近の私はある監督だけを特権化する「作家主義」が嫌なので、ぜひとも見たいとは思わなかった。しかしこちらで『ルモンド』を始めとして各紙が絶賛するので、見てみたくなった。

物語は、バルセロナの大学でイタリア出身の文献学の教授の授業から始まる。ダンテなどの文学から恋愛の意義を読み取るというもの。ところが美しい女子学生たちは、自分の恋愛と混同し、教授に相談するうちに危ない感じになる。

女子学生とサルデーニャ島に行ったり、別の学生とナポリに行ったり。不満な妻との会話が間に挟まる。車窓を通した男女、窓の向こうの夫婦、カフェの窓の向こうの男女。すべてはうつろう。揺れる映像の美しさは、キアロスタミ並みだ。

ナポリのホテルの部屋で半裸の女性と一緒にいながらも、ピント教授はいつも通り難しい顔をして話す。つまりあくまで文献学の表の顔を崩さない。男女の場面はキスもなく、すべてしゃべるだけ。これを欺瞞ととるか、おもしろいと取るかは意見が分かれるだろうが、マッチョな監督であることは間違いない気がする。それは『シルヴィアのいる街で』からそうだった。

もう1本話しているばかりの映画を見た。「メルシー・パトロン!」Merci Patron!というフランスのドキュメンタリーで、2月の公開から大当たりしてロングランというので興味を持った。

内容は、ルイ・ヴィトンなどのLVMHグループに勤めていた夫妻が工場の移転で失職したのを見た青年が、株主になって総会に出て発言したりして、この夫妻のためにベルナール・アルノー総裁から退職金などをせしめるというもの。

「ファキール」という雑誌の編集長、フランソワ・ラファンが監督・主演を務めるものだが、どちらかと言うとテレビのバラエティー番組のノリで、見ていておかしいけれど、どうというものではない。ところが公開後2カ月たっても平日午後の回なのに100人ほどの劇場が7割ほど埋まり、終わると拍手が沸いた。

夫妻は北仏の街でLVMHグループのKENZOの工場に勤めていた。工場が経費削減のために、ポーランドに移転するので、職を失う。結局、ラファンの尽力で退職金をもらい、夫はLVMHグループのスーパー「カルフール」に職を得る。

登場人物みんなが「I LOVE アルノー」のTシャツを着て、アルノーをコケにするのが受けるのだろう。日頃言いたくて言えないことを大っぴらにやったという感じか。フランス人の日常の鬱屈は、相当溜まっているようだ。

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