« クレジットカードを不正使用される | トップページ | パリジャンの日常:その(2) »

2016年4月26日 (火)

ドゥパルドンとグリーンの新作

レイモン・ドゥパルドンとウジェーヌ・グリーンの新作を試写で見た。試写といっても、もちろん通常のプレス試写にはパリでは私に声はかからない。ドゥパルドンの「住民たち」Les habitantsは、最近日本で監督に会っていたので招待してもらった。彼の映画は『モダン・ライフ』だけが日本で公開されている。

グリーンの「ジョゼフの息子」Le fils de Josephの試写は、シネマテークの年間会員向け。関係者や招待客もいるが、会員はネットで申し込むだけで無料となる。監督やプロデューサーの舞台挨拶付きなのでこの種のシネマテークの試写はかつてはずいぶん早くから並んだが、会員制度でずいぶん楽になった。

「住民たち」は、フランスの15の都市をバントラックで回るドキュメンタリー。一般の人々を2人ずつ車内にいれて、自由に話させる。出てくるのは、ニースを除いてはたぶん人口数万の小さな町ばかり。かといって山の中とか過疎地ではない。

つまりはどこにでもあるようなフランスの田舎町にバントラックが止まる。話すのもどこにでもいるような普通の人々。インテリはいないし、極端に貧しい人も出てこない。若いカップルだったり、中年の夫婦だったり、若い女性2人だったり、それぞれ3分ほどか。

俗語や方言も多く、実は私には半分くらいしか理解できなかった。出てくる人々の自然な会話に、会場は何度も笑いが起きて盛り上がったので、少し寂しい思い。

今回はいつものドゥパルドンの映画と違い、監督の声や姿はない。あくまでシンプルに、田舎道を通るバンの後ろ姿が写り、ある街に止まるバンとその中での会話を固定ショットで捉える。その繰り返し。83分という短さで、普通のフランス人の実像をそのまま見せようとした感じで、すっきりした印象を受けた。

ウジェーヌ・グリーンという監督の映画は初めて見た。アメリカ人でフランス在住の監督というが、日本では東京日仏学院でやったくらいではないか。見てみると、最初はストローブ=ユイレの映画のように思えた。登場人物は突っ立ったまま、正面を向いてセリフを棒読みする。

ところが見ているうちに不思議と気持ちが良くなる。物語は父のいない少年と母親の世界に、一人の男ジョセフが現れるというもの。少年の実の親の嫌味な小説家をマチュー・アマルリックが演じる。少年や母親やジョセフの純粋な生き方が何となく心地よくなり、映画に清冽な風のようなものが流れる。

ある種の映画原理主義のような、あらゆる無駄を省いて感情のリリシズムだけを見せようとする試みだが、どこか成功している。「住民たち」もそうだが、こんな映画が国の助成金を得て作られ、映画館できちんと上映されるのはすごい。

フランスの「作家主義」は、映画愛とか何とかよりも、映画に対する国の政策のたまものではないか。

|

« クレジットカードを不正使用される | トップページ | パリジャンの日常:その(2) »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/63512979

この記事へのトラックバック一覧です: ドゥパルドンとグリーンの新作:

« クレジットカードを不正使用される | トップページ | パリジャンの日常:その(2) »