« パリジャンの日常:その(2) | トップページ | 『舞踏会の手帖』の日々:その(2) »

2016年4月28日 (木)

MK2で2本

フランスには、MK2という映画会社がある。マラン・カルミッツというルーマニア出身の元監督の会社で、製作・配給から始まって今ではパリ市内最大のアート系映画館チェーンで知られる。30年前は3つか4つのサイトだったが、今や20くらいか。偶然に2日連続してそこでベトナム映画とアメリカ映画を見た。

たぶんフランスに来て、一番驚いた映画が、ベトナムのファン・ダン・ジー監督の『大親父と、小親父と、その他の話』。この題名は英語題の訳で、調べてみるとこの題で今年の「大阪アジアン映画祭」で上映されていた。仏語題は「メコン・ストーリーズ」Mekong Stories。

最初にメコン川が画面に出て来た時から、これはいけると思った。川岸に建ったぼろ家、そこで暮らす人々、舟で遊ぶ子供たち、最初からすべてが映画になっている感じがした。

最初は初期のホウ・シャオシェン監督のような青春ものかと思った。ヴュという青年はなぜか乱暴者のタンが好きで、タンには彼が経営するナイトクラブで女王として踊る娘ヴァンがいる。あるいは路上で歌を歌うトゥンや工場で働くクオン。日本製カメラを手にしたり、携帯電話を買ったり。ヴュの父親は懸命に息子に女性を好きにならせようとするが。

ところが見ていると、その映像が実はかなり前衛的なのに気がつく。若者たちの貧しさを淡々と描いているようで、時にツァイ・ミン・リャンやアピチャッポンさえ思わせるような映像や光が点滅する。

歌謡曲を歌うおばさんたちや、歌いながらボンボンを売るトゥンたち、ヴァンのバレエの練習、泥の中のセックス、敵対する連中との喧嘩、すべてはきらめき、ある種のノスタルジックな雰囲気に染まってゆく。

こんな映画がベトナムの監督の2本目で、ベトナム・フランス・オランダ、ドイツの合作だとすると、21世紀の映画は本当にアジアの時代ではないかと思う。去年のベルリンで銀熊賞を取っているが、日本では公開の噂は聞かない。この監督は、今後国際映画祭を騒がせる巨匠になるのは間違いないと思うが。

もう1つは、日本でも公開中のトム・マッカシー監督『スポットライト 世紀のスクープ』。最近は地味なアート色の強いフランス映画やアジア映画ばかり見ていたので、たまにはアメリカ映画を見たいと思った。それに新聞社のスクープものは、やはり昔の血が騒ぐ。

アメリカ映画としては淡々とした地味な作りだろうが、ハイレベルの観客だけを相手にするようなフランス映画ばかり見ていたせいで、十分に派手に思えた。坊主頭に近いマイケル・キートンを中心とした4人の調査報道班の動きは手に汗握るもので、最後に印刷された新聞がトラックに積まれて運ばれるシーンには涙してしまった。

そういえば、こんな「普通の映画」を、この1カ月見ていない。だんだんフランスのインテリの映画観に近づいてしまった。いかんいかん。

|

« パリジャンの日常:その(2) | トップページ | 『舞踏会の手帖』の日々:その(2) »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/63514650

この記事へのトラックバック一覧です: MK2で2本:

« パリジャンの日常:その(2) | トップページ | 『舞踏会の手帖』の日々:その(2) »