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2016年4月 3日 (日)

テシネの新作

アンドレ・テシネの新作「17歳の時」Quand on a 17 ansをアパートから歩いて10分強の映画館で見た。87歳で元気バリバリの映画評論家、ジャン・ドゥーシェさんに勧められたから。公開の翌日だった。

アンドレ・テシネという1943年生まれの監督は、1970年代から活躍したポスト・ヌーヴェルヴァーグの世代だが、フィリップ・ガレルなどに比べていま一つ影が薄い。地味ながら、一般向けの映画をきちんと作るという感じか。『ランデヴー』(1985)とか『野生の葦』(94)とか、何本かは日本でも公開されているけれど最近は名前を聞かない。

新作の「17歳の時」は、それなりにおもしろかった。ピレネー山脈の山の中。医者の母と軍人の父を持つ裕福なダミアンは、高校でなぜかトムにいじめられる。学校から2時間もかかる山奥に住むトムは養子で、養母は病気。ダミアンの母が診察をする。どうも妊娠したようで、トムはおもしろくない。

2人の少年の痛いほどの愛憎が、きめ細やかに描かれる。2人は最初は憎みあい、殴り合いの喧嘩までする。冬の夜中に湖で泳ぐほどのトムの自然そのものの姿に、ダミアンは次第に惹かれてゆき、ダミアンの母さえもうっとりする。

動物のようなトムと都会的で繊細なダミアンの対比がいい。ともに自分の気持ちを自分でわからずに、感情に任せて行動する。ダミアンの母を演じるサンドリーヌ・キベルランは、ほかのフランス映画でも何度か見たが、2人の少年を見守りながらも、戦争に行った自分の夫を心配しており、見ていてホッとする存在だ。

全体は3部構成で、演出は無駄なく淡々と進む。登場人物たちの感情を表す場面はほんの少し見せて、すぐに次へゆく。自然と人間の過酷さをてらいなく見せる感じだが、途中からだんだん登場人物たちの気持ちに入ってゆく。そして、終盤に驚くべき展開を見せる。

秀作だと思うが、さて日本で公開できるかというと、難しいかも。今年のベルリンのコンペ作品のようだが、フランスの山奥に住む17歳の高校生2人のこじれた感情の物語だから、さて誰が見たいかと考えると難しい。もともとフランスの作家映画は、繊細に作られてはいるがいったい誰が見るのかというものが多かった。これもその1本と言えるかもしれない。

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