パリの生活が始まった:その(9)プールで叱られる
久しぶりの独り暮らしにあたって、決めたことがあった。一番は、飲み過ぎないこと。二番は、食べ過ぎずいろいろな食材を食べること、三番は運動をすること。このうち、二番と三番を同時にする方法を見つけた。歩いて10分ほどの近くのプールに行って泳ぎ、その後に魚屋で買物をする。
そこのプールはビュット・オー・カイユという小高い丘の上にある。アールヌーヴォーの美しい建物で、ガラスの天井から太陽が見えるのが素晴らしい。夏は野外プールが有名だという。
今は室内プールのみだが、最初に行った時は、4回も叱られた。まず、窓口にブルドックのような顔のオヤジがいた。1回券で3ユーロを払ったまではいいが、その後にそのチケットを機械に通さずに入ったので、「ダメだ、もう一度やり直し!」と大声で言われた。そこから着替え室にスタスタと歩いて行ったら、「そこは靴を履いてはいけない!」とブルドッグの声。
その後に日本から持ってきたトランクスの水着でプールに行こうとしたら、「それは水着ではない!」と別のお兄さんから言われた。困っていると「今日はこれを使ったら」と貸してくれた。それを履いていよいよプールに近づいたら、中にいた大男が「おい、そこ、シャワーを浴びてからあっちから入れ、この馬鹿!」と怒鳴る。馬鹿とは何だと思ったが、規則ならしょうがない。市営プールなので、毎月会費を払っている日本のスポーツジムとは訳が違う。
シャワーを浴びて、ようやくプールに入った。何だか日本と違って、みんなずいぶん勝手に泳ぐ。猛然と追い越して、私の頭に手をぶつけた男もいた。ある時は目の前にいきなり飛びこんできた女がいて、危なかった。ほとんど無法地帯である。
考えてみたら、シャワーも着替え室も日本人から見たら無法状態。まず、シャワーは個室がない。男女の別もない。そこで裸になっている老人もいるが、おおむね水着を着たままシャワーを浴びる。それからロッカー室のロッカーの番号と鍵の番号が全く合っていない。29番のロッカーに、なぜか22番の鍵が付いている。これでは番号の意味がない。
ロッカーも男女の区別はない。その前に着替え室があり、そこは唯一個室。だがそこには水が出ないので、水着は洗えない。またシャワーの方に戻って洗うしかない。
それでも泳ぐと気持ちがいい。その後に魚屋でサーモンや海老やイカやムール貝などから選んで買う。エビだけで5種類くらいあるので迷う。選んだ魚を10ユーロほどで買って10分ほど自宅まで歩いていると、何度も叱られたことを忘れて幸福な気分になる。何とも安上がりな性格だと自分で思う。半年間の研究成果はともかく、健康は保てそう。
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