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2016年5月 2日 (月)

デュヴィヴィエ2本

シネマテークではジャン・ギャバンの特集が開催中だが、街中の映画館ではジュリアン・デュヴィヴィエ監督作品の4K復元版数本が上映中だ。もちろんデュヴィヴィエの映画にギャバンは何本も出てるから、この2つはかぶる。

私のアパートから10分ほどのところにファヴェットという去年秋にできた映画館がある。元映画館をパテ=ゴーモン社が改装したもので、古典映画の復元版やオペラの中継を専門にやる新しい施設のようだ。入ってみると大きなカフェがあり、中庭もあるし、客席も快適でスクリーンも大きい。いっぺんで好きになった。

この映画館で見たのがデュヴィヴィエの『我等の仲間』(1937)と『パニック』(46)。ともに脚本をシャルル・スパークとデュヴィヴィエが担当しているが、『パニック』の方が何倍もおもしろかった。

もちろん『我等の仲間』はジャン・ギャバンが出ているし、フランスでも日本でもデュヴィヴィエの代表作として知られている。ところが今見ると、全体が文学的というか、ドラマが映像で見えず、あらすじで引っ張られるような感じがした。

物語は、貧乏な5人の仲間が宝くじに当たって、みんなでパリ郊外に家を買ってレストランに仕立てようというもの。ところが、そのうちのマリオは婚約者がいたが、かつての犯罪で国外追放になり、女と去る。それ以前にその婚約者に恋をした若者は苦しくてカナダへ去る。

友人たち向けのお披露目では、一人が屋根から落ちて死ぬ。開店の日には2人しか残らないが、彼らは女を巡って喧嘩して、殺人へ至る。

例えば家を改装して出来上がってゆく過程が、写真で数カット見せるだけで、映画としてきちんと写らない。それでも歌を歌って踊り、女を誘惑するジャン・ギャバンは圧倒的にカッコいいけれど。

それに比べると『パニック』は、シムノンが原作のせいもあって、最初からあちこちに影が漂う。主演のミシェル・シモンはギャバンと逆でもてない典型。彼は私立探偵で、何でも写真を撮る。そこに殺人事件が起き、真犯人は女と逃げようとするが、探偵が秘密をつかんでいる。

女は男の指示で探偵をたぶらかし、探偵を犯人に仕立て上げようとする。ラストは、探偵が大衆に取り囲まれて犯人扱いされる中で建物の屋上に逃げるが落下。死んだ探偵のカメラから真犯人の証拠が出てくる。

最後までどう終わるかわからないし、探偵がみんなに取り囲まれていじめられるシーンは集団心理を見せていて怖い。最後は真犯人と女がメリーゴーランドに乗っている不気味なショットで終わる。

そういえば、『我等の仲間』で家を買うのはパリ郊外の川のそばの一軒家だし、『パニック』で探偵が女を連れてゆくのも、同じ感じの場所。かつてのパリジャンが思い描く、理想的な家だったのかもしれない。

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