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2016年5月28日 (土)

カンヌが終わって:その(3)

もうこのへんでカンヌは終わりにしたいが、いくつか気になったことを書いておく。1つは「ある視点」部門で審査員賞を受賞した時の深田監督の挨拶が、きちんと報道されなかったことだ。

多くの新聞は、共同通信電の「深田監督は「スタッフと俳優の総力で作った映画。その力が認められたことが何よりもうれしい」と喜びを語った」と似たり寄ったり。これは通常の挨拶で、おもしろくもおかしくもない。

実は彼はその後に「日本人はフランス映画が大好きで、フランス人も日本映画が好きです。しかし両国の間には韓国とフランスの間のように合作協定がありません。今後2つの国の結びつきが強くなることを期待しています」と述べている。

これは映画祭の公式WEBTVで今も見ることができる。この中で2つ目のUn Certain Regard Closingを選ぶと16分30秒くらいから深田監督の日本語の挨拶が出てくる。

実際この映画は日仏の合作だが、もし合作協定があれば、フランスの映画会社の出資や国立映画センターの助成金を格段に得やすくなるということだ。もともとこの映画も、同じ「ある視点」部門の是枝裕和監督『海よりもまだ深く』も、既にカンヌに決まる前からフランスの配給会社は決まっているし、海外販売もそれぞれ別のフランスの会社が担当している。

つまりカンヌに出るには、作る時からフランスの映画会社と組まないとダメである。合作協定があればそれがさらにやりやすいということだろう。授賞式の時の機会を狙ってこういうことを言うのはすごいなと思ったら、フェイスブックで深田監督が、その理由を書いていた。

「ちょうど10年前の2006年、パスカル・フェラン監督はセザール賞の受賞スピーチの場で、フランス映画行政の現状への批判をぶち上げました。
 発言できる立場にある者がちゃんと発言する社会意識と、自身が最も注目される場を利用するしたたかさに私はいたく感銘を受けました。何かそれなりの大きさの賞を受賞できたら自分もそれに倣おうと以前から密かに企んでいて、昨日はまさにその機会だったわけです(いや、セザール賞と比較するのはさすがにアレかも知れませんが)。
 やるぞと意気込んで受賞に備えアレコレ言うことを準備していたものの、他の賞の登壇者のスピーチが思ったよりも短かかったことに動揺し、舞台上で変に端折ろうとして、緊張していたのもあってだいぶおかしな空気になってしまいました(笑)」

私もフェラン監督のスピーチには感動していただけに、この発言には驚いた。今回のカンヌにはコンペこそ邦画は入らなかったが、ある視点には2本入り、もう1本スタジオジブリが製作参加したフランスのアニメ「レッド・タートル」も特別賞を取った。さらにコンペのジャームッシュの映画に永瀬正敏、パク・チャヌクの映画に国村隼が出た。

つまり日本の映画関係者の人脈は大きく世界に広がっている。ところが制度はまだまだ遅れている。そんなことを改めて感じさせた深田監督の発言だった。ほかにもカンヌで気になったことはあるが、また別の機会に。

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