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2016年5月22日 (日)

映画以外のカンヌの話:その(3)

カンヌではとにかく列に待つことが多いので、参加する各国のジャーナリストを観察する。彼らは普通の常識がない。列に割り込み、上映中にメールを見る。映画が終わりそうになると、エンドマークの前に席を立つ。前に書いたように、ある日、上着と「ルモンド」を置いてトイレに行って帰ると、「ルモンド」が見当たらなかった。

隣の男が「ルモンド」を読んでいるがまさか私のではあるまいと見たら、「ありがとう。いないあいだに読んでました」と笑って返してくれた。彼が体臭の強い初老の男だったので、その後に新聞に触れるのが嫌になったけど、怒るのは止めた。

ある時には映画が始まると、隣の若い女性は小さな鏡を取り出して化粧を始めるではないか。スクリーンの光を鏡に当てて、顔にいろいろ塗っている。それが終わったと思ったらスマホでメールを書き始めたので、さすがに注意したら、スイと立って出て行った。

31年前と一番違うのは、アジアのジャーナリストが増えたこと。たぶん各国から百人以上はいる。中国人や韓国人は昔と違っておしゃれなので、日本人と区別がつかない。でもわかるのは、まず彼らが若いから。

日本人は40代から70代まで。何十年も通っているジャーナリストも多い。ところが中国人や韓国人は20代から30代が中心。着ているのも、今風で軽い。日本人が、男性ならジャケットを着て比較的保守的な格好をしているのとは大違い。タイやフィリピンなど東南アジアの人々は日本人とはだいたい見分けがつくが、彼らもまた若い。

彼らが若い頃にカンヌを見たら、その後どんな仕事をするにしても、悪いことではないだろう。そもそもプレスのカードを取るだけでも大変だから、その苦労をするだけで貴重なはず。日本の若者はこういう場所にもう出てこない。やはり将来はあちらにある。

そういえば、1985年のカンヌには、コンペに中国映画があった。いかにも中国共産党推薦のような保守的な作品だったが、代表団が5人来ていた。監督や女優も含めて、彼らは全員マオカラーの人民服を着ていた。

ある日昼頃彼らを道で見つけたので、こっそりついて行った。彼らはいろいろなレストランの前でメニューを見て、いつも首を振っていた。そして駅前にあったマクドナルドにぞろぞろと入っていった。たぶんレストランより安いからだが、マクドナルドへのあこがれもあったのかもしれない。

ホテルと会場の間を毎日歩いて往復しながら、ときおり31年前を思い出す。今日が最終日。もうここに来ることはないかもしれない。

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