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2016年6月14日 (火)

「黒いダイヤモンド」から『黒い鳥』へ

偶然に、題名に「黒」のつく暗い映画を2本見た。アルチュール・アラリというフランスの俳優の第1回長編「黒いダイヤモンド」Le diamont noirは、最近の新人には珍しいフィルムノワール。ダイアモンド商の一家に生まれた青年が、不遇な父の死をきっかけにその復讐を企てるというもの。

冒頭に主人公ピエール役のニルス・シュナイダーの長い睫毛のアップが写る。それからダイヤモンドを磨くシーンと父の事故。

そして、強盗をしながら生きてゆくピエールの暗い人生が映し出される。彼はダイヤモンド商を諦めた父の死を知り、その仕事を奪ったアントワープに住む叔父への復讐を考える。そんな時叔父の息子のガビ(アウグスト・ディール)から仕事を手伝わないかと誘いがある。

ピエールはアントワープで叔父の友人のアトリエに入り込み、次第にダイヤモンドの仕事を身につけてゆく。そして復讐の機会が来るが・・・。

もともとダイヤモンドという究極の虚構の世界が怪しげだし、ニルス・シュナイダーをはじめとして、この一族はみんな影があっていい感じ。インド人のダイヤモンド王も怖い。後半ちょっとドラマが複雑すぎるし、物語を作り過ぎている感じはするが、あくまで意識的なB級としてフィルムノワールを作る姿勢は悪くない。

ただとにかく後味の悪い映画なので、これまた日本での公開は難しそう。最近のフランスの若手監督にはこういう職人技的な商業映画を作ろうとする者が少ないので、貴重な存在になるのではないか。

後味の悪い映画と言えば、トッド・ブラウニング監督の『黒い鳥』Blackbird(1926)を初めてシネマテークで見た。サイレントの怪奇スター、ロン・チェイーニーが背むしの牧師とならず者の兄弟を2役で演じるというもの。ロンドンの下町が舞台だが、この映画も出てくる者全員が怪しい。

牧師とならず者ブラックバードの兄弟が喧嘩をしているさまをロン・チェイニーが1人で演じて、声だけを隣の部屋に聞かせて「牧師が危ない」と思わせるシーンなど、本当に見ていて凍り付く。ブラックバードとフランス人の美女フィフィを取り合う紳士バートも実は宝石泥棒の常連だし、フィフィもブラックバードの元妻のポリーもまともには見えない。

宝石泥棒を追うスコットランド・ヤード(ロンドン警察)が、ブラックバードに翻弄されるのもいい。こんなダークな映画は、後に『フリークス』を作ったトッド・ブラウニング監督と怪優ロン・チェイニーのコンビならでは。

シネマテークでの上映では、若いピアニストが伴奏をしていて、これも興奮を高めてくれた。

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