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2016年6月30日 (木)

ボローニャ復元映画祭:その(2)

そんなわけであまり真面目に映画を見ているわけではないが、見た映画についていくつか書き残しておきたい。まず映画祭で最初に見たのは、ソヴィエト映画の「激しい道のり」Fiery Miles(1957)。たまたま通りがかったら、信頼するフランスの映画評論家が入っていったので、吸い込まれるように入場。

監督はサムソン・サムソノフというが、聞いたことがない。たぶん日本では知られていないのでは。しかしながら映画は抜群におもしろかった。冒頭、馬車から撮った映像に度肝を抜かれる。そして、疾走する列車から映画は始まる。屋根にしがみついて乗っている人々と、中にいる裕福な人々。

このうち、中にいた軍人と医者と舞台俳優、外にいた看護婦と怪しい男の5人が、止まった列車から降りて2台の馬車に乗って逃げる。そこに襲い掛かる反革命分子たち。裏切り者の怪しい男。

看護婦と軍人の間に愛が芽生えるのを見て、これはジョン・フォードの『駅馬車』ではないかと思った。雄弁な俳優は途中で死んでゆくし、最後には政府軍が現れるし。そのうえ、この映画には明らかにソ連の体制への批判まであるように感じたが、これはもう1度見ないとわからない。

午後は、フィルムセンターの岡島さんが日本のカラー映画特集で『千人針』(1937)と『カルメン故郷に帰る』(1951)の前に解説をするというので、出かけた。この映画祭で日本映画の特集を数年前から企画しているのは、アレクサンダー・ジャコビーとヨハン・ノードストロームという日本語のできる若い外国人2人というのがすごい。

当たり前の話だが、日本人が日本映画はすばらしいと無理して英語で言うよりも、外国人が言ってくれた方が説得力がある。日本映画の海外での受容も、新時代に入っていると感じる。

『千人針』は実は日本初のカラー映画だが、失われた映画となっており、モスクワのゴスフィルム・フォンドから見つかった。つまり、満州にあった日本のプロパガンダ映画がソ連に没収されていたわけだが、そういうことがなければ、永遠に失われた映画になっていたに違いない。

この映画は完全版ではなかったが、赤紙の赤の鮮やかさや千人針の縫った赤い糸、出征する兵士の赤いタスキなどが何とも物悲しかった。物悲しいといえば、『カルメン故郷に帰る』の盲目の音楽家を演じる佐野周二が弾くオルガンの哀しい音楽がとどめを刺すだろう。

この映画は30年ほど前に見て、何だか恥ずかしかった。苦手な映画だと思って長い間見ていなかったが、今回はストレートに感動した。戦後日本の精神状況をこれほど巧みに描いた映画はなかなかないのではないか。外国で見たから感じたのかもしれないが。外国で日本映画の古典の復元版を見るのも悪くない。これはカンヌで『雨月物語』を見た時にも思ったが。


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