パリの地下鉄に注意!
パリの地下鉄では「スリに注意!」というアナウンスが仏語、英語、西語、伊語、そして日本語で流れる。私は、むしろルーヴル美術館の入口付近やレアール地区の方がジプシーなどがいて危ないと思っていた。あるいはカフェのテラスでスマホに夢中になるとか。
実際に、友人の娘がベルリンに留学中にカフェでアイフォンを盗まれた話も聞いていた。だから何で地下鉄の中でアナウンスがあるのか、不思議だった。
ところが、先日地下鉄のスリの現場に出会った。というか知り合いの日本人女性を案内していたら、スリに遭いかけた。ダンフェル・ロシュローという中心から少しはずれた駅で、地下鉄6号線からRER(高速郊外線)に乗り換えようと降りた時。
彼女は降りてすぐ、手持ちの小さめのビニールバッグのチャックが空いているのに気づいて、中を探って「盗られた!」。私は閉まった地下鉄のドアに戻って両手でドアをドンドンと叩いた。運転手はそれに気がついて、列車を発車させない。ドアの向こうの客たちも何が起こったかと見ている。
するとドアの向こうで13、4歳の少し色黒の娘が、急に微笑んで床から拾った動作をして、ポーチを見せた。友人の女性が「それ!」と言うので、渡せと合図をすると、窓から渡してくれた。その娘は親指を突き出して大丈夫かと聞くので、中身を確認してこちらも親指を突き出した。それを見た運転手は発車した。
友人によれば、降りる瞬間に誰かが近づいた気がしたという。そして降りて見たら、チャックを開けられており、確認するとクレジット・カード数枚を入れたポーチがなくなっていた。私が大きな動作でドアを叩いたので、盗んだ娘はこのままだと地下鉄は止まったままで自分は捕まると判断し、拾った振りをして返したのだろう。
わずか5分ほどの出来事だが、冷や汗が出た。朝の9時過ぎで通勤客もかなりいた。観光客狙いというより、満員電車で隙の多そうな女性を、降りる直前に狙っていたのだろう。やはりアナウンス通り、地下鉄の中は危ないのだった。
そういえば、30年ほど前に目の前で友人の肩掛け鞄のチャックが開けられたことがあった。その時は2人で「こらっ!」と日本語で大声で怒鳴ったので、スリのジプシー風娘たちは退散した。今回もそうした古典的なスリだろう。
テロも怖いけれど、それは個人では防げない。日本人にとっては、こうした日常的なスリの方がよほど危ないかもしれない。
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