夏のローマを歩く:その(2)
よく「ラテン系」という言い方で、フランスやイタリアやスペインをまとめる。確かにドイツや英国や北欧とは明らかに違った共通点があるけれど、今回ボローニャやローマを歩いてフランスとイタリアはかくも違うかと痛感した。
ローマの地下鉄に乗ると、パリに比べて相当危ない感じが漂っている。まず、駅入口もホームも暗い。まるで洞窟のようなのは、あちこちに古代遺跡のある街に合わせているのかと思ったくらい。とても夜は乗る気にならない。
コロセウム駅で地下鉄を待っていたら、太った男性がイタリア語と英語で「スリに注意!」とかなり大きな声を上げた。その先を見ると中学生くらいのジプシー風の女の子が3人。昔と違ってかなり身なりがいいし可愛いのでわからなかった。それから急に身構えるようになった。
滅茶苦茶だと思ったのは、チケットの自動販売機。1枚は1.5ユーロだが、紙幣も受け付けている。硬貨がなかったので、紙幣を入れるとすべての機械で戻ってきた。駅の窓口に聞くと、紙幣は3枚以上買わないと使えないとのこと。もちろんクレジットカードは使えない。そもそも窓口では売ってくれないし、両替もしてくれない。
「3枚買えばいつでも使えるから」と言うが、その日に帰る私のような客はどうするのか。パリの地下鉄はそんなことはないし、機械が苦手なら窓口でも買える。駅構内の照明も含めて、現代の文明国としてのまともさがイタリアには欠けている。
驚いたのは、地下鉄車両に冷房が入っていたこと。パリではない。もっともパリはローマや東京に比べると夏の暑さはたいしたことはない。ホテルやレストランもパリは高級でないと冷房がないが、イタリアはだいたいある。
今回ローマでバスに乗ったが、これはパリと同じ。遺跡ばかりのせいかパリのように地下鉄が発達していないので、バスを使う人は多い。しかしチケットはパリのように地下鉄と共通でないし運転手は売ってくれないので、タバコ屋などで事前に買う必要がある。
ローマでは、とにかくTシャツ半ズボンの軽装で大勢の観光客が歩いている。とんでもなく暑いのにも関わらず。少し遠くから見ると、まるで無数の原始人が遺跡を求めて彷徨っているようだ。特に欧米人はまるで自らのルーツを探しているかのようにまじめに回っている。こんな不思議な光景はイタリアだけではないか。
パリに戻ってきたら、実に涼しい。夜も過ごしやすい。そのうえ、だんだんみんなバカンスに出かけて人も少なくなってきた。するとちょっと寂しくなって、灼熱のローマが妙に恋しくなる。
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