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2016年7月13日 (水)

サント・ヴィクトワール山のまわりを巡りながら

7月になるると、みんな別れ際に「ボン・ヴァカンス!」と言いながら去ってゆく。そんなこともあって、私も南仏の友人宅で週末を過ごした。マルセイユとカンヌの中間くらいに位置するが、山の中で一番近い駅まで車で30分。

その友人は、32年前の9月に「フランスを知ろう」というセミナーで会った。1週間、外国人10名ほどとフランス人10名ほどがフランスのある地方で合宿をする。滞在費や食費は無料。私が参加したセミナーは、日本から10名ほど、北フランスの地元から5名ほど、フランス各地から5名ほどが集まった。

そこで出会った北海道出身のMさんは後にパリで暮らし、数年後に出会ったフランス人と結婚して、南仏に住んでいた。行ってみると、何とプール付きの豪邸。水着を持ってこいと言われていたが、着いたとたんに泳いだらと言われて、夕食前にひと泳ぎ。

15メートルほどのプールでも、自然に囲まれてさんさんと輝く太陽のもとで泳ぐのは心地よい。そして庭にしつらえたテーブルでバーベキューを食べていると、天国にいるような気分になる。ダンナさんは普通の会社員なのに、こんな暮らしができるとは、いったいどういうことなのかと思う。

翌日になってどこに行きたいか聞かれて、ネットで検索してエクサン・プロヴァンスに行きたいと答えた。もちろんセザンヌが頭にあったから。

すると、セザンヌが何度も描いたサン・ヴィクトワール山を回りながらエクサン・プロヴァンスに行く道を通ってくれた。横に広がる象の背中のような石灰岩の岩山が、反対側から見ると木々の間から三角に尖って見える。セザンヌの絵画自体を破壊するような衝動がどこかわかる気がする。

映画でこんな旅を見たと思って考えたら、ジャック・リヴェット遺作の『小さな山のまわりで』(ビデオ題は『ジェーン・バーキンのサーカス・ストーリー』)があった。これはピック・サン・ルーという違う山だけど、同じ南仏で付近の感じはかなり似ている。

その後に、エクサン・プロヴァンスの街でセザンヌのアトリエやその近くの彼が絵を描いた場所などを見学した。それから有名なグラネ美術館では、セザンヌやマティスに近かったシャルル・カモワンの個展も見たし、常設のセザンヌやピカソも見た。

しかし私にとっては、サン・ヴィクトワール山を車でぐるぐる回った時間の方が、何ともセザンヌ的だった。もう一度リヴェットの映画を見たい。

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