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2016年7月14日 (木)

「ジャングルの掟」に唸る

アントナン・ペレジャトコという若い監督の「ジャングルの掟」La loi de la jungleを見た。1974年生まれのこの監督は、最初の長編「7月14日の娘」が日仏学院などで上映されていたが、見ていなかった。「カイエ・デュ・シネマ」誌に大きく取り上げられていたので、見に行ったがすばらしかった。

主演は、『女っ気なし』などで最近は日本でも知られるヴァンサン・マケーニュ。この俳優は、若いのにはげて長髪で小太りで、いかにも情けない30代という役がぴったり。今回は彼が「標準省」の研修で、仏領ギアナに行くところから始まる。

もちろんフランスに標準省Ministere de la Normeなどは存在しないし、そこの官房長からギアナ行きを命じられるが、その官房長がいかにも怪しい。怪しいと言えば、最初に出てくるギアナのシーンで、何やら式典をつかさどる長官を演じるマチュー・アマルリックからして抜群にヘンだ。

そのうえ、ヘリコプターが森林の上をマリアンナ像を吊りながら走る。フェリーニかと思いきや、マリアンナ像はことりと下に落ちてしまう。

マケーニュ演じるシャテーヌは、現地に着いて運転手の研修生の若いフランス人女性ターザン(ヴィマラ・ポンス)と出会う。ギアナでは人工スキー場の建設を視察することが目的だが、2人はいつも混乱に巻き込まれ、蛇やトカゲやありとあらゆる昆虫や動物に悩まされる。

時おり、シャテーヌの夢の映像が出たり、パリやケベックなどでのいい加減な国際会議の様子が出たり。あまりの混乱ぶりに少し眠くなるが、2人が漕ぐボートからの眺めなど時おり実に美しいシーンがあるし、いつもターザンが半ズボンで妙に魅力的だ。

最初はジャック・ロジエのような「失敗するバカンス映画」かと思って見ていた。『トルチュ島の遭難者たち』のような。あるいは、出てくる人物や筋の滅茶苦茶さを見ていると、ジャック・リヴェットのような気がしてきた。『北の橋』とか。

ところがシャテーヌとターザンがまるで『軽蔑』のような劇的な音楽で惹かれあい始めると、俄然ゴダール映画に似てくる。ヴィマラ・ポンスはほとんどアンナ・カリーナに見えてくる。彼らが性欲増進の薬を飲んでしまい、抱き合うシーンなんて、おかしいのに感動的だ。時々、「愛は旅だ」といった字幕がタイプを打つ形で出てくるのもゴダールに近い。

こんなヘンテコな内容だけれど、アルテなどが出資してかなり予算を使った作品になっているのも驚き。この監督はたぶんこれからカンヌのコンペに出るような作品を作るのではないだろうか。何とも楽しみ。

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