『大進撃』の謎
『大進撃』La grande vadrouilleという、1966年のフランス映画がある。公開時に1700万人の観客を集めて、フランスの興行記録ナンバー1を40年以上続けた大ヒット作だ。この映画の4K修復版が公開されたので、見に行った。
ちなみに日本では当たったという話を聞かない。1966年と言えば、ヌーヴェルヴァーグが盛んな頃で、監督のジェラール・ウーリーは全く評価されていないし、フランスでは超人気喜劇コンビという主演のブールヴィルもルイ・ド・フィネスも、日本ではあまり知られていない。
私にとっては、フランスでそんなに当たったというだけでも見たくなる。日本でヒットしなかったなら、なおさら興味深い。見終わって、確かにフランス人にとっていくつかの当たるポイントがあるように思えた。
まず、「ドイツ占領期をユーモアで生き延びた2人の普通のフランス人」という肖像が、パリ解放後20年と少ししかたっていないフランスで受けたのだと思う。それをコント55号のようなデコボココンビが演じるのだから。とりわけブールヴィルという俳優の即興的なコメディは、キートンやエノケン並みにすごいと思った。
これに対して、彼らが結果として助けることになるイギリス人は真面目なだけであまり面白くないし、ドイツ兵に至ってもむしろユーモアの欠けたトンマな存在しとして描かれていることも、フランス人の愛国心をそそるのだろう。
そしてフランスの男たちを助ける美人のフランス女性たちがいる。彼らのおかげでレジスタンスが成功するという筋書きも、フランス人好み。最後に看護婦が白衣を着て馬車を操って、2人のフランス人と3人の英国兵を助け出すさまは、西部劇に近い。
さらにその馬車は、ラストに空撮で写される。ここにクレジットが重なると、フランス人は凡庸で馬鹿だけど、女たちと協力して何とか戦争に勝ったという感慨がわくという仕組む。
ドイツや英国兵の紋切り型な描き方にも驚いたが、英国兵が再集結の場所と指定したのが「トルコ風呂」というのにもビックリ。「モスク」という言い方もしているが、イスラム教とトルコのハーレムが安易に結び付けてあるのも当時らしい。今ではとても無理な脚本だろう。
こういう大ヒット作の復元上映は楽しい。有名監督でないからこそ、当時の文化や文明の刻印が感じられる。
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