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2016年7月 3日 (日)

アンスパック遺作のプール映画

今年のカンヌの監督週間に出ていたソルヴェイグ・アンスパック監督の「水の効果」L'effet aquatiqueを見た。この女性監督は、2000年に「アニエス b.は映画大好き パートⅡ」というフランスの新人監督特集を企画した時に知った。

彼女の第一回長編「勇気を出して!」Haut les coeursは最終的には上映しなかったが、ビデオで見てフランスらしくないゴツゴツしたドキュメンタリー感覚が心に残っていた。

日本で公開されたのは、たぶん『陽のあたる場所』(2003)のみではないか。これはフランス人の女性医師とアイスランドから来た謎の患者の交流を描いたもので、彼女の代表作だろう。そして2年前のフランス映画祭では「素顔のルル」を見た。こちらは40歳前後の主婦の放浪を描いたヘンな可愛らしい作品だったが、劇場公開は決まらなかった。

去年の8月に54歳で亡くなったというニュースがフランスで流れたが、日本では全く報道されなかった。今では当たらなかった公開作1本では、新聞も載せてくれない。そのこともあって気になっていたら、今年のカンヌで遺作が上映されたので見たかったが、時間繰りができなかった。

「水の効果」は、ある女性に一目惚れした40歳前後の男サミールが、彼女の名はアガタでモントルイユ市営プールの教師と知って、泳げないと偽って水泳教室に通う話。だんだん仲良くなったところで、サミールが本当は泳げることがバレてしまう。アガタは水泳教室世界大会出席のためにアイスランドに行くが、サミールはそこまで追いかける。

まず、モントルイユ市営プールに勤める面々が見るだけでおかしい。酔ってプールに女性2人を連れ込んだことがバレたプールの責任者が市の文化局から叱責を受ける爆笑シーンがあるが、ちなみにその文化局長役は監督が演じていた。

水泳教室世界大会の参加メンバーも完全にずれている。そのうえ、サミールはコーヒーメーカーから火が出て、記憶を喪失してしまうし。そんな荒唐無稽な展開なのに、モントルイユのプールもアイスランドのプールも何とも魅力的に撮られていて、特にサミールとアガタが近づくシーンは秀逸。

『陽のあたる場所』のようなシリアスな映画に比べると、この脱力系のユーモアはなかなか日本人には難しいかもしれない。せめて映画祭などで上映してほしい。ちなみに監督はアイスランド生まれだから、彼女の映画にはやたらにアイスランドが出てくる。

この映画を見た後、私もパリの市営プールに行った。野外プールはまだ肌寒い。

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