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2016年7月19日 (火)

身を引くこと

最近、「身を引く」ということを考えることが多かった。日本のニュースをネットで見ただけだが、都知事選の宇都宮健児氏がいったん立候補を表明しながら辞退した最近の出来事。彼はもともとこれまで2度も立候補しており、次点だった。

今回も既に立候補を表明していたが、野党が統一候補として鳥越俊太郎氏を立てたため、鳥越氏や野党と話し合って、降りることを決めたという。自民党が2つに分かれたから、野党系がこれで統一したらかなり強力になることを計算した上での決断だった。

とにかく安倍政権ではいけない。そう思っている人が多くても、全国の総選挙では結局勝つ。大都市の東京なら反自民が勝つ可能性が高いが、これまでは候補を統一できなかった。だから今回の統一は大きな意味があると思う。もちろん宇都宮氏はそれをわかって判断したのだろう。場合によっては「妥協」と非難されることを知りながら。

もうひとつ、もっと驚いたのは天皇の「生前譲位」。今の天皇は、安倍首相よりも何倍も国際感覚があり、かつ平和を愛しており、弱い者に優しいという印象を持つことが多い。しかしながら今回の「生前譲位」はもっとすばらしい。本人が言わなければ、絶対に周囲は言えないことをわかっての決断だから。

天皇が現代の日本に本当に必要なのかは、個人的にはわからない。しかし今の日本の皇室が天皇を始めとしておおむね愛されており、彼らの存在や行動や言葉が多くの日本人を勇気づけているのはまちがいない。それが昭和天皇のように亡くなるまで権力を持ち続けるのではなく、早いうちに譲って若い世代に活躍してもらうというのだから、これまたすばらしい。

こんなことを考えたのは、この間書いたドゥズーズさんが、2000年に60歳で「自分にはコンピューターで映像は作れない」と早期退職をしたと聞いたから。定年は65歳だから、5年も早く退いたことになる。

もちろん彼の場合は経済的に豊かだったことが大きいけれど、それでも「大学教授」というタイトルは魅力的だったはず。まわりから「先生」「教授」と言われて適当な話をしていれば、まず辞めさせられることはない。それを敢えて捨てるには、本当の勇気と想像力が必要なはず。

実際に大学を早期退職した例は、日本でもフランスでも極めて少ない。松浦寿輝さんや四方田犬彦さんのように、作家として十分に稼げる人々くらいだろう。

自分もあと5年で退職したら、どんなに社会のためにいいだろうと思う。だけど、たぶんできないだろう。

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