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2016年8月 5日 (金)

ベルリンで見た映像の展示

ベルリンの話をもう少ししたい。この街は、パリと同じくらい展覧会が充実している。島にいくつもの博物館が集積する地区があり、ラファエロやフェルメールを何点も持つ絵画館がある。もちろんナチやユダヤ関係の博物館もある。さらに「ウィリアム・ケントリッジ」展や「スペイン美術の黄金の世紀展」など企画展も多かった。

まず映画の専門家としては、映画テレビ博物館の常設が新しくなっていると聞いて、足を運んだ。ここは私の知る限り、イタリアのトリノ映画博物館と並んで世界で最も映画史をわかりやすく展示していると思う。

うまいのは、重要な作品、監督、俳優には何部屋も使っていること。『カリガリ博士』をたっぷり見せた後に、表現主義の映画を見せる。『メトロポリス』をロボットの模型やデッサンなどで何部屋も見せた後に、監督のフリッツ・ラングのほかの作品にも触れる。

ここの一番の見どころは、マリーネ・ディートリッヒの展示だろう。衣装だけで一部屋があるし、『嘆きの天使』を軸に、彼女がドイツやアメリカで撮った作品をきちんと見せる。さらに戦時中はナチを嫌ってアメリカ軍に協力した写真なども見られる。

ナチス時代のプロパガンダ映画も1部屋を使ってきちんと見せる。詳しい資料や映像は、引き出しを開ける仕組みになっている。見たいという意思がある人だけが見るという仕掛け。

ルビッチやムルナウ、ラング、スタンバーグ、ダグラス・サークなど米国に移住した監督もパスポートや契約書を展示するなど、しっかり見せる。

戦後についてはかなり軽い扱い。ヘルツォークやシューレンドルフ、ヴェンダースなどのニュージャーマン・シネマはもう少し手厚いかと思っていたが、さらりとした感じで、最近のクリスチャン・ペツォルトやオスカー・レーラーなどの監督とあまり変わらない。

ここの展示の成功は、本当に重要なもの、みんなが見たいものを軸にしていることだろう。ローマのチネチッタの展示は、このフォーカスが全く定まっていなかった。

映画ではないが、映像展示としてはマルティン・グロピウス・バウで開かれている「ウィリアム・ケントリッジ No it is!」展がすばらしかった。半分くらいは2010年の東京国立近代美術館での個展で見たものだが、それ以降の作品も多い。

2015年のSweetly Play the Danceはアフリカのダンスの行進を横に8面くらいつなげたスクリーンで見せるもので、実写とアニメの組み合わせがうまい。この作家は南アフリカの苦悩の歴史を見せると同時に、この国の活力をポジティブに見せることもあるのだと思った。

政治から資本主義、そして機械文明からメディアとあらゆるものに潜む矛盾を提示し、その中で進む人間を写す。ちょっと間抜けな感じで本人も時々出てくる。ケントリッジの愚直で誠実な姿が見えるいい展示だった。

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