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2016年8月 9日 (火)

24年ぶりのロカルノ:その(2)

ロカルノ映画祭はベネチアやトロントを一か月後に控えているため、昔から差別化を図る努力をしている。1つは過去の作品の特集回顧上映をやることで、1983年の成瀬巳喜男特集は、成瀬を世界的に「発掘」したものとして語り継がれている。

成瀬はこの特集によって、黒澤、溝口、小津と並ぶ「第4の巨匠」となった。ほかにも日本だと木下恵介や加藤泰の特集があった。私が行った92年は、イタリアのマリオ・カメリーニの特集だったことを思い出した。

今年は「1949年から63年までの西ドイツ映画」。その後のニュージャーマン・シネマの隆盛のせいもあって、映画史的に不毛な時代とされてきたが、実はそうではないという話のようだ。大半は知らない監督ばかりだが、パブストやフリッツ・ラングなどのほか俳優のペーター・ローレの監督作品まである。これだけで70本強だから圧巻。

新作に関しては、巨匠よりも若手や尖った映画を集めている。それは『風に濡れた女』というロマンポルノのリブート作品を、国際コンペに入れていることからも明らか。さらに別枠で神代辰巳の『恋人たちは濡れた』(73)まで上映するという念の入れよう。

『恋人たちは濡れた』の枠は、「映画史」Histoire(s) du Cinemaというもので、もちろんスイス出身のゴダールの映画の題から来ている(複数形の)「映画史」。カンヌやベネチアのクラシック部門のように、復元は前面に出していない。

さまざまなスポンサー名の付く名誉豹賞をもらうアレハンドロ・ホドロフスキー、ジェーン・バーキン、ステファニア・サンドレッリなどの作品や追悼が捧げられるキアロスタミ作品などが主だが、その中に「スペシャル・スクリーニング」として忍び込ませてある。

国際コンペには、ほかに日本から富田克也監督の『バンコク・ナイツ』が出品。この監督は『サウダージ』(2011)がここのコンペに出ているので2度目だが、『サウダージ』のような先鋭的作品をいきなりコンペに入れるとはすごい。この監督の新作に、ポルノ映画という相当に際どい邦画2本が、わずか17本のコンペに混じっている。

『風に濡れた女』以外にもコンペを数本見たが、ポルトガルのジョアン・ペドロ・ロドリゲスの「鳥類学者」O Ornitologoにぶっ飛んだ。鳥類学者の青年がボートに乗って望遠鏡で鳥を観察しているうちに遭難する。そこで出会うのが巡礼中のキリスト教徒の2人の中国娘、言葉が離せない美青年、なぜかラテン語を話す古代の女性戦士3人。

ヨーロッパの辺境からいつの間にか異教的汎神論的世界が浮かび上がり、夢とも現実ともつかなない華麗な世界が展開する。次の展開が全く読めないままに、2時間が過ぎた。大いなる人類学的ビジョンを感じる驚異的な作品だ。

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