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2016年8月22日 (月)

シネマテークの常設展示に考える

シネマテークは8月いっぱい休みなので、7月末にシネマテークの常設展示を休館前に久しぶりに見ようと思った。9月以降はベネチアそのほかでバタバタになるから。32年前にシャイヨー宮のシネマテークで見た時の展示は、正直に言うと骨董市のようだった記憶がある。

暗い展示室に、古い機材や衣装が並んでいるだけで、映画前史や映画の起源に関心のなかった私には、全く興味が持てなかった。

ベルシー地区に移ってからは、企画展ができるスペースが別にでき、話題になった。いくつかは日本にも来た。文化村の「ルノワール父子展」、森アーツセンターの「ティム・バートン展」(シネマテークの企画ではないが)、フィルムセンターの「ジャック・ドゥミ展」など。

この春から夏に開催していた「ガス・ヴァン・サント展」も、彼の写真や音楽や絵画なども見せて、その多才ぶりをうまく見せていたと思う。そのほか前に見た「ペドロ・アルモドバル展」もすばらしく、私は日本に持ってこようとしたほど。

常設展示室はシャイヨー宮に移ってからは、ざっとしか見ていなかった。だけど今回ゆっくり見たら、かなりがっかりした。ベルリン映画博物館の見事に構成された展示を見ていたからかもしれない。

まず一番の印象は、機材と衣装とポスターとデッサンが無秩序に並んでいる感じ。フランスはリュミエール兄弟やメリエスの生まれた国なのだから、まず彼らをじっくりと見せて欲しかった。リヨンのリュミエール研究所が昨年グランパレでやって、6月に私がボローニャで見た「リュミエール!」展を見習ってほしい。

メリエスも、『月世界旅行』でメリエスが来たマントがあるのはいいが、彼のトリックの天才ぶりを見せる映像も写真も解説もない。いくらでもおもしろく見せられるのに。

映画前史はフェナキストスコープやゾーエトロープ、テアトル・オプティックなどの展示物は見事だが、時代順にきちんと説明していない。エチエンヌ・ジュール・メレイも解説不足。それなのに、機材ばかりが並んでいる。

その後のフランス映画の発展もわかりにくい。そしてなぜかソ連とドイツのサイレント期になり、エイゼンシュテインの『アレクサンドル・ネフスキー』の衣装やラングの『メトロポリス』の人造人間模型が並ぶ。あくまでモノありき。

そしてマン・レイなどのフランスの前衛映画でおしまい。かつてはこの上の階も常設展示が続いていたが、今ではそこは「寄贈者ギャラリー」になっている。寄贈品を展示しないといけない理由はわかるけど。

企画展示は広くて力を入れているのに、常設は旧態依然。アンリ・ラングロワ・コレクションと名付けているように、彼にこだわり過ぎているのも失敗の理由の一つ。実際、彼をめぐる映像が2つもあったし。

映画の展示は難しい。特に常設展示は。だけど、トリノやベルリンのようにうまくいった見本はある。

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