「垂直のままで」の過激さ
カンヌのコンペで見たアラン・ギロディ監督の「垂直のままに」Rester Verticalを再び見た。この監督は前作の「湖の見知らぬ男」L'inconnu du lacが、男性が集まるハッテン場の湖を描いたストレートなゲイ映画だった。1本の映画で、男性器をこれほどたくさん見たことはたぶんない。
今回は、同性愛は前面には出ていない。冒頭、車がゆっくり進んでいくと、そこには美少年が立っている。主人公らしき青年レオは「映画に出てみないか」と近づくが相手にされない。
それから、レオは羊飼いの女性マリーと仲良くなる。性交のシーンではいきなり女性器のアップが出てくるあたりが、この監督らしい。それから何と子供が生まれる。そこも出産のシーンをアップ。
マリーはレオが子供は愛しているが自分に関心がないことを悟り、2人の連れ子と共に山小屋を去る。残されたのは、レオと赤ちゃんとマリーの父親ジャン=ルイ。レオは父親が誘惑するのを避けて、赤ちゃんと逃げる。川の中をボートで行くが、そこで謎の美女に会う。
美少年はいなくなり、老人マルセルが残されて、ピンク・フロイドを大音響で聞いている。レオは時々電話を受けるが、どうもプロデューサーに追われているようだ。プロデューサーはとうとうやってきて、森の中の謎の美女と簡単に寝てしまう。ようやくシナリオを書き出すレオ。
子供と街を彷徨うレオは、夜中に浮浪者の集団に襲われる。それ銃を持って助けに来たのは、ジャン=ルイと美少年ヨアン。
レオはマルセルに会いに行く。マルセルは死ぬ間際にレオに性交をお願いし、薬を飲んで死んでゆく。レオはそこに来た警察に逮捕される。抜け出してマリーの家に行くと、マリーはヨアンと住んでいた。レオはジャン=ルイの元で隠れて暮らすが、ある時狼の群れに取り囲まれる。
たぶん日本での公開は無理なので、あらすじを書いてみた。あまりにも奇想天外かもしれないが、人間の根源的な欲望に忠実に迫ってくる映像は実に刺激的だ。映画監督を主人公にしたのは成功かどうかは疑問だが、それまた人間の欲望のひとつ。
カンヌではみんなポカンとしていた。2度見ると、やはりとんでもない才能だと思う。『エル』をフランス映画と考えたら、今年のカンヌのフランス映画は健闘したのではないか。題名の「垂直のままに」は、男性器を意味するのだろうか。
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