パリのささいなこと:その(5)
日本人にとって、パリで一番いらいらするのは、窓口で待つことだろう。最近暑いので市営プールによく行くが、チケットを売るのはたったの1人。だからチケットを買うだけで10分待つこともある。これはスーパーも同じで、10人客がいても1人でゆっくりやる。
最近はフランプリというスーパーで、待つ客が多いと待機中の従業員がマイクで呼び出されるシステムができたが、これはまれなケース。ちなみに従業員はぶうぶう文句を言っている。
そのうえ、客は従業員とおしゃべりする。プールの窓口では、老人割引についてえんえんと議論しているおばさんがいた。だから列はすすまないが、誰も文句は言わない。そんなことは当たり前のようだ。
今はちょうどバカンスが終わりつつある時期だけれども、みんなが1月も休めるのは、たぶんこの効率の悪さを容認しているからだと思う。多くの人間を投入すれば効率はよくなるが、休みは少なくなるのだろう。だからバカンスと非効率はつながっているのではないかというのが、最近の私の屁理屈。
それでもバカンスが終わって、レストランやパン屋が再会するのは嬉しい。みんな焼けた顔で、客と元気だったかと言い合っている。私も5ヵ月も住んだので、いくつかのお店ではその仲間入りをして、言葉を交わしている。どこに行ったかと言われて、「スイスのロカルノに行って、来週はベネチアに行く」というと羨ましがられるが、まさか映画祭だとは思いもしないだろう。
毎日、観光客を横目に見ながら、3本から5本の映画を見て文章を書くなんて、とてもまともな人間のすることとは思えない。去年だったか、イギリスの有名な映画評論家と帰りの空港行きの船で一緒になった。声をかけると、何をしているかと聞かれた。大学と言うと面倒くさくいので「ジャーナリストだ」と言うと、「プア・フェロー!」=あわれな仲間よ!と言われた。
無料で映画を見て文章を書くなんて、確かに「あわれな」人間だと思う。カンヌやベネチアのプレス試写では、無料で何十年も映画を見ているような、「あわれな」人々をよく見る。とにかくみすぼらしい格好をして、無料のカフェやパーティに群がる。ロカルノのプレス・ルームにはジャーナリスト用の無料電話があったが、端から友人に電話をしている者が何人もいた。
考えてみたら、そんな人々は日本の試写室にもいる。パリの待たせる話から、話が逸れたが、今日はここでおしまい。
| 固定リンク
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 1年ぶりの海外で考えたこと:その(1)(2026.09.11)
- 飛行機のトラブル(2026.09.07)
- 久しぶりの名古屋(2026.06.09)
- 今年の旅行(2025.12.19)
- 鹿児島のこと(2025.10.24)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 飛行機のトラブル(2026.09.07)
- 美術と映画をめぐって(2026.08.26)
- 本を売る(2026.08.20)
- 人生の僥倖(2026.08.09)
- いつの間にかイタリア映画の専門家に(2026.08.07)


コメント