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2016年8月15日 (月)

24年ぶりのロカルノ:その(5)

カンヌの時と同じく、賞の発表の前日にパリに戻ってパソコンで受賞結果を見た。映画祭最終日は上映作品も少なくなるので、私にはこれで十分。受賞の言葉などは映画祭のサイトに出ているから、記事は書ける。

金豹賞が「ゴッドレス」に行ったのは、十分に理解できる。老人介護という世界的な問題を、介護する側の不正行為を中心に克明に描いたのだから。不正をするガヤを演じた女性まで女優賞というのは、少しほめ過ぎとは思うけれど。

審査員特別賞のルーマニアのラデュ・ジャデ監督「傷ついた心」Inimi Cicatrizateはここで触れていないが、かなりおもしろかった。1937年のルーマニアの海に面したサナトリウムを舞台に、20歳の肺病の青年を描く。そこで繰り広げられる恋愛模様や死との直面や病院との対立が、ユーモアたっぷりに描かれる。その巧みな群像劇の演出はなかなか見ごたえがあった。

最優秀監督賞のポルトガルの「鳥類学者」についてはここに書いた通り。個人的には金豹賞を与えたかったと思う。ただ一般的には難解な映画だから、最優秀監督賞あたりが妥当な線かもしれない。男優賞のポーランドのヤン・P・マツジンスキー監督「最後の家族」Ostenia rodzinaはコンペで唯一未見だが、特別賞の「ミスター・ユニヴェルソ」はここで触れたように納得がいく。

若手コンペ部門では、真利子哲也監督の『ディストラクション・ベイビーズ』が新進監督賞を取った。既に日本で公開しているので見た方もいると思うが、相当にアナーキーな映画だった。四国の松山を舞台に、衝動のままに暴力を繰り返す若者を描く。

何を考えているか最後までわからない主人公を演じるのは、柳楽優弥。恋愛とかセックスとかさえも交えず、破壊衝動だけで生きる高校生をある意味でピュアに描く。私はいい作品だが過激すぎるので賞は難しいだろうと思っていた。

コンペの邦画2本は正式な賞ではないが、映画ファンからなる若手審査員賞の1等と3等をそれぞれ『バンコクナイツ』と『風に濡れた女』が受賞したのは嬉しかった。2本とも正式な賞の受賞作に比べると、自由で過激すぎて枠がはずれた感じだったが、若い人々に支持されたというのは、大きいのではないか。

会場で若手審査員を見たが、映画好きの大学生が8名ほどで、楽しそうに映画を見ていた。こんな賞があるのも素敵なことだと思う。

結局、出品された邦画3本はすべて受賞した。これら過激な映画を出品させるだけでもすごいのに、賞まで与えるとは、何ともすばらしい映画祭ではないか。

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