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2016年8月 4日 (木)

「ギボールは戦争に行く」と「カルミナ!」のユーモア

フィリップ・ファラルドーというカナダの監督は、日本でも『ぼくたちのムッシュ・ラザール』や『グッド・ライ 一番優しい嘘』(未見)が公開されている。同じカナダでも、グザヴィエ・ドランのように繊細な才能を炸裂させるわけでも、ドゥニ・ヴィルヌーヴのように激しいドラマを見せるわけでもない。

『ぼくたちのムッシュ・ラザール』を見た限りでは、淡々とした日常をユーモアたっぷりに丁寧に見せる監督のようだが、今回の新作ではその手法で政治家とその一家を取り上げた。

「ギボールは戦争に行く」Guibord s'en va a la guerreは、政治家のギボールが国会で中東への戦争に参加するかを決める投票をどうするかで悩み姿を描く。そのうえ、議会は拮抗しているので、戦争に賛成すれば大臣の椅子を用意すると囁かれる。

ギボールは住民の声を聴くために、選挙地を回る。手伝うのは戦争賛成の妻と反対の娘に、ハイチからの研修生。この4人の珍道中に、住民たちは自分勝手な意見を述べる。いわばドタバタ喜劇に近いが、ギボールのある種の誠実さが、いい結果を生む。

見ていておかしくほのぼのといったところだが、カナダのフランス語が極めてわかりにくく、すべては理解できなかったのは残念。

スペイン映画「カルミナ」Carmina y amenのユーモアは、もっとブラック。冒頭で夫が突然亡くなって悲しむカルミナだが、娘マリアが来ると「2日後の月曜に年金が降りるので月曜までこのままにしよう」と提案するところで、題名が出る。その時、得意そうに煙草を吸うカルミナの姿に、なぜかマカロニ・ウエスタンのような音楽が流れる。

夫は居間で死んでいるのに、知らない隣人や友人たちは訪ねてくる。すると死体を見つけそうなギリギリで、カルミナはマリアと2人で工夫してごまかす。なぜか信じられないほどスケベな話をする女までやってくる。

月曜に年金をもらって、警察を呼ぶと医者は疑問を呈する。これまたカルミナはうまくかわす。親戚や友人が弔問にやってくるが、これまた大騒ぎ。葬式がスローモーションで写ったので終わりかと思ったら、とんでもないオマケまでついていてびっくり。

調べてみたら、これは2014年の映画。監督のパコ・レオンは日本では俳優として出た『地中海式 人生のレシピ』が公開されただけのようだ。「カイエ・デュ・シネマ」は無視だが、「ルモンド」には大きな記事があった。読んでみて、カルミナを演じたのが監督の母で、マリアは妹というから、腰を抜かしそうになった。そのうえ映画の終わりには「母に捧ぐ」と出てくるのだから。

この映画は本当におもしろいので、ぜひ日本でも公開してほしい。

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