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2016年8月 2日 (火)

16区の展覧会をハシゴ

16区は高級住宅街として知られるが、私の住んでいるアパートからはかなり遠い。だからその地区の展覧会をいくつかまとめて見た。パリ市立近代美術館の「アルベール・マルケ展」、となりのパレ・ド・トーキョーの「ミシェル・ウェルベック展」に、近くのギメ国立東洋美術館の「アラーキー展」。

「アルベール・マルケ展」は予想以上によかった。マルケ(1875-1943)はフォーヴィスム(野獣派)の画家として知られるが、マティスはもちろんのこと、ドランやブラマンクに比べても個性が弱い印象を持っていた。そのせいか、個展もたぶん日本では開かれていないし、フランスでも本格的な個展は初めてのようだ。

ところがこれがおもしろい。彼の特性は風景画にある。ちょっとヘタウマ風に海や川を描き、手前の人々と空や太陽を入れる。これを少し離れてみると水がキラキラと輝き、動き出しそうに見えるから不思議。そして水と大地、水と空の境目がいつのまにかなくなっている。

特に地中海を描いたものがいい。南仏の海岸、ベネチア、ナポリ。チュニジアやアルジェリアもあるが、エキゾチズムは押さえて、ひたすら水の動きを描く。水辺に写る森の醸し出す幻想性に、思わずうっとりしてしまう。

ポンピドゥ・センター所蔵の《ポンヌフ橋、夜》は、珍しく夜の街灯やネオンを描く。セーヌ川と空が真っ黒で混じり合い、夜の光が蛍のように輝く。もっと夜の絵を見たかったと思う。

「パレ・ド・トーキョー」は20年ほど前から現代美術館になったが、話題の小説家、ミシェル・ウェルベックの個展は、つまらなかった。彼自身の写真や映像もあるが、大半は彼が好きなアーティストたち。いかにも思わせぶりの作品ばかりでうんざりした。「朝日」の夕刊でだれかが絶賛していたが、大丈夫かな。

この会場ではほかにも現代美術展がいくつもあったが、どれもウエルベック展よりいい。なかではミカ・ロッテンバーグ展が一番目立った。アナーキーでありながら、知的に現代社会を批判している。真珠工場の展示は見たことがあると思って調べたら、横浜美術館の村上隆コレクション展で展示されていた。さすが村上隆。

ギメの「アラーキー展」は、あのエキゾチズム満載の美術館で見ると、妙に淫靡に見せる。会場も地下で、何だか見てはいけないものを見ているような感じが付きまとった。そのうえ、別の階では「欲望のイメージ:浮世絵における日本女性」と題して、春画を含む展覧会もあった。

だからギメには珍しく、スケベそうなフランスの中年オヤジがうろうろいた。あるいは好奇心旺盛の若い女性とか。こういう点は、フランスも日本と変わらない。

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