映画以外のロカルノの話:その(1)
前回のロカルノでは、グランド・ホテルに泊まった。駅近くの丘に立つ壮麗なホテルで、当時は1泊4万円ほど。たいしたことのなさそうな3つ星が2万円以上だったので、そこに決めた。それは1925年のロカルノ条約が結ばれた歴史的施設で、その銘板もあった。
今回もできたら泊まりたいと思って予約サイトで見るが、見当たらない。行ってみたら何と現在休業中で、ちょうどベネチアのホテル・デ・バンと同じように近寄れないようになっているが、壊されてはいない。
ダニエル・シュミットの『季節のはざまで』の上映後のパーティも、このホテルの庭だった。今回はここと比べたらとんでもなく遠く小さなホテルに泊まっているが、家族経営で感じが良く、ちょうど『季節のはざまで』の舞台のホテルを思わせる。
ただし、映画祭に通うのは不便。ネットの写真と地図を見て、直線距離であまり遠くないと思ったのが誤りで、高度を考えなかった。カンヌも少し山に近い方に泊まったが、そんなものではない。歩いてあれほど疲れたのは、高松の金毘羅さん以来ではないか。
結局、毎日登山電車で往復する。8時から20時までは15分おきで、20時からは30分おきで24時でおしまい。これに乗ると、ホテルからメイン会場まで20分で着くが、いかんせん本数が少ないうえ、高い。片道で500円、往復割引で800円ほど。
もともとスイスはフランスやイタリアに比べて物価が高い。食事も、座って給仕付きで食べたらニース風サラダでも2000円は取られる。夜に布テーブルの店で食べると、前菜、主菜とワイン1杯で、1人5000円はまず超す。まあこの半年は、もう二度とない散財の季節だと思っているけれど。
そのうえ、あまりおいしくない。特にパスタを食べると、そのぬちゃっとした柔らかさにここはイタリア語圏かと言いたくなる。料理は全体に何となくイタリア風だが、肉料理が中心。
ロカルノに来て思うのは、一般の観光客が多いこと。カンヌもごった返しているが、これは映画関係者がほとんど。カンヌはIDカード発行者だけでも5万人だから。それに比べると、ロカルノは4000人強(プレスは900人強)と言うから関係者は多くない。
ところが普通の観光客はたぶん何万人もいる。そして彼らは一般向けの有料上映に積極的に参加する。特に夜のピアッツァ・グランデでの21時半からの野外上映は、毎回8000人で大半は一般客。中世の建物が残る石畳の広場の夜の雰囲気がたまらないからだろう。
そんなこんなで、毎日登山電車で通勤している。
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