« ヴェルサイユのオラファー・エリアソン | トップページ | シネマテークの常設展示に考える »

2016年8月21日 (日)

『釜山行き』の驚異的娯楽度

今日から、ちょうどあと1ヵ月後にパリを発つ。だんだんバカンス明けが始まり、映画館で新作が増えてゆく。封切られたばかりの韓国映画『釜山行き』を見た。ヨン・サンホ監督、コン・ユ主演で韓国で大ヒット中というが、5月のカンヌのコンペ外上映でも大好評だった。

コン・ユ演じる父親が娘を連れて離婚した妻のいる釜山へ列車で向かう話だが、その列車にゾンビが発生し、乗客を襲う。噛まれるとみんなゾンビになり、コン・ユたちにも迫ってくる。さて彼らは釜山にたどり着けるか。

それだけの話なのに、2時間、全く飽きさせない。主人公たちが列車に乗ってから、ほぼ5分おきに見せ場があり、そのたびごとにゾンビが増えてゆく。ゾンビたちがドアに群がってその重さで自然にドアを打ち破って出てくる瞬間や、ゾンビたちが列車にぶら下がったまま列車が走り続けるシーンなど、本当にゾクゾクする。巧みにCGを使った場面が、最大限の効果を出している。

そして迫力で押すシーンの合間に、情緒的な場面を入れ込み、悲しい音楽をたっぷり聞かせる。この緩急の間の具合がうまく、手に汗を握りながらも人間的に感激する仕組みになっている。

まず、株のディーラーで娘との時間がなかなかないコン・ユ演じる主人公と娘との、コミュニケーションの問題がある。そして、この列車の中で2人は少しづつ信頼関係を回復してゆく。もう1組、無頼派の男と妊娠中の若妻の愛が映画を彩る。主人公とこの男が、途中からだんだん仲良し=バディになってゆくあたりも泣かせる。

さらにクラブ活動をする大学生のカップルがいて、職務を尽くそうとする列車の運転手がいる。唯一の悪役として、列車会社を牛耳る社長も乗っていて、最後は自分だけが生き残ろうとする。この社長に扇動された人々と主人公たちの戦いも痛ましい。

それなのに、あちこちに笑わせる場面も散りばめられている。ゾンビのホラーに、列車映画のサスペンス、主人公たちの愛、そして質のいいユーモア。

アクション映画としては、たぶんハリウッドも太刀打ちできないくらいに完成度が高いのではないか。「ルモンド」紙も「カイエ」誌も絶賛していて、観客にも批評家にも支持されている感じ。個人的には、鉄道を使ったサスペンスのうまさに、高倉健が出た『新幹線大爆破』(1975)を思い出した。もちろんこちらには、韓国映画にはない反政府的なアナーキーさが濃厚だけど。

|

« ヴェルサイユのオラファー・エリアソン | トップページ | シネマテークの常設展示に考える »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/64074655

この記事へのトラックバック一覧です: 『釜山行き』の驚異的娯楽度:

« ヴェルサイユのオラファー・エリアソン | トップページ | シネマテークの常設展示に考える »