作家映画2本:「モカ」と「カップルの経済学」
ロカルノで「ピアッツァ・グランデ」(大広場)で上映されるものは、コンペ作品ではない。既にカンヌで話題になった作品や、一般にもわかりやすい映画が多い。そこで上映されていたフレデリック・メルムー監督の「モカ」Mokaをパリの劇場で見た。
1969年生まれの監督の2本目で、エマニュエル・デュヴォスとナタリー・バイという豪華キャスト。デュヴォス演じるディアンヌはローザンヌに住み、息子がひき逃げで亡くなったショックに耐えきれないでいる。私立探偵を雇って、犯人の車が湖の向こうのエヴィアンにあることを突き止める。
その車の持ち主の家を見つけ、妻の高級美容師(ナタリー・バイ)と仲良くなる。銃を入手して殺そうとするが、真実は少し違ったというもの。
丁寧な撮影だし、サスペンスものとしてもきちんと作られているが、どこかリアリティがない。ディアンヌは美容師の夫や船で会ったチンピラを誘惑するし、美容師も妙にミステリアス。全体に登場人物がみんな思わせぶり過ぎて、復讐の話にはとても見えなかった。
スイスの監督でスイス=フランス合作だが、フランスの作家映画のダメなところが出ている気がした。舞台となったローザンヌやエヴィアンは、ロカルノに似て湖に面した風光明媚な場所なので、ちょっと懐かしかったけれど。
カンヌの監督週間で上映されたベルギー出身のジョアキム・ラフォス監督の「カップルの経済学」L'economie du coupleも最近劇場で見たが、これもある意味でフランスの作家映画らしい。別れる寸前の夫婦を細やかに微視的に描いたものだが、こちらの方がずっとリアリティがしっかりしていて演出力が上だけど。
妻のマリーを演じるべレニス・ベジョーがいらいらしている感じが伝わってくるし、妻にしがみつきお金に細かい男を監督のセドリック・カーンが好演している。そして2人の間を行き来する2人の娘も極めて自然な演技。
終盤の病院のシーン数分以外は、100分間がほとんど彼らの家の中で進む。その緊張感と焦燥感は十分に伝わってくるけれど、こんなつらいだけの映画を誰が見たいだろうか。ましてやメインが離婚のお金の話ばかりだから。
前から思っていたが、室内で男女がぶつぶつ好きだ嫌いだと話すだけを繊細に撮るフランスの作家映画が多すぎる。今回の2本はスイスとベルギーの監督だが、その伝統を引き継いでいる。
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