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2016年8月20日 (土)

ヴェルサイユのオラファー・エリアソン

日本から知り合いの家族が来て、どこか一緒に観光して欲しいという。もともと観光は苦手だが、ヴェルサイユ宮殿では現代美術作家のオラファー・エリアソンがインスタレーションをしていると聞いていたので、このついでに行くことにした。

彼の作品は原美術館の個展で見て好きになったが、最近、ルイ・ヴィトン財団の地下の展示を見てもっと見たくなった。このデンマーク生まれでベルリン在住の作家は、私には光と鏡と水と色彩の魔術師に見える。

まずはヴェルサイユ宮殿の「鏡の回廊」の奥に、光の輪がいくつかあり、そこの鏡に見ている我々が写る。豪華絢爛そのものの「鏡の回廊」には何も展示せず、アホな顔をして見ている観客を取り込む形で、奥にひっそりと穴がある。それを覗いたら最後、もはやはまってしまう。

さらにグラン・アパルトマンにはオレンジや黒の穴があり、のぞき込むとまるで球体が浮かんでいるように見える。欠けた部分に自分たちの姿が写り込む。さらに別の部屋には鏡の円盤がぶら下がっていて、円盤の表裏の間にオレンジの光が輝く。

大半はエリアソンの名前も知らないヴェルサイユを訪れた大勢の観客をもてあそぶかのように、あるいは王室用の家具の並ぶド派手な宮殿に光と鏡の裂け目を生み出すかのように、なにげない作品が室内を支配する。小さいし、数も少ないのに、無限のエネルギーを生み出している。

庭に面した廊下に目玉のようなものが2つあって、そこに小さな自分の姿が写る作品もあった。これはコンセプトとしてはおもしろいが、視覚効果は小さいかも。

庭に出ると、その片隅の小さな広場のような空間にもあった。大きな池の水をなくし、そこに乾いた粘土のようなものを詰めているのが、なかなか渋い。粘土が割れていて、まるで歴史の産物のよう。大いなるだまし、という感じか。

それから知り合いの希望に沿って、グラン・トリアノンやプチ・トリアノンを見た後、マリー・アントワネットが構想した田園「アモー」を見に行った。ところがそこでまた迷ってしまった。「また」と書いたのは、たぶん2007年の2月頃に、日本の美術館学芸員2名と一緒にここで迷ったから。

あの時はなぜか、プチ・トリアノンからアモーに行く途中で外に出てしまい、1時間もたどり着けなかった。結局元に戻った。今度はアモーを見て出口に出ようとして、何度も迷った。そのうえに雨まで降って最悪。

エリアソンの幻影のせいではないだろうが、あの場所に行くといつも迷う。ようやくアパートに戻り、エリアソンのサイトを見たら、大運河の入口の滝のような水が実はエリアソンの作品だとわかった。見た時は、「観光客のためにあんなものまでわざわざ作ったのか」と思ったが、エリアソンと思ったら急に有難味が増してきた。私の現代美術好きは、その程度かもしれない。

そういえば、その日は「音楽の庭」とやらの日で、庭に出るには入場料金17ユーロと別に8ユーロで計25ユーロ。「音楽の庭」は生演奏があるかと思いきや、録音した音楽があちこちの庭でスピーカーから流れているだけ。これはひどすぎるし、高すぎる。

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