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2016年9月30日 (金)

北朝鮮の闇を照らす映画

ドキュメンタリー映画の場合、その対象を「見たい」と思えば、すぐに見に行く。帰国後、そう思ったのが、『将軍様、あなたのために映画を撮ります』。ロス・アダムスとロバート・カンナンという2人の英国人の共同監督という。

韓国の申相玉(シン・サンオク)監督とその妻で女優の崔銀姫(チェ・ウニ)が、1970年代に北朝鮮に渡り、金正日の依頼で映画を撮っていたという話は、昔から一種の伝説のように聞いていた。

1996年から97年にかけて、「韓国映画祭」(私の企画で唯一の赤字になった映画祭)を企画した時、このコンビの映画は数本上映した。『ロマンス・パパ』や『離れの客とお母さん』など、ずいぶん面白かった記憶がある。確か監督も来日したと思う。

私の中のイメージは、彼らが積極的に北朝鮮に渡ったというものだったが、この映画を見てそれが全く違っていたことを知った。2人とも別々に拉致されて、特に申監督は強制収容所に入れられていたうえ、2度も逃亡を図っている。

崔銀姫の誕生日に金正日から招待されて行くと、そこに申監督がいたという。それを泣きながら語る老いた崔銀姫。彼女がまだ生きていたことにも驚く。

一番のビックリは、2人と金正日があった時の会話が録音されて残っていたこと。「ぜひ北朝鮮で欧米を驚かすような映画を作って下さい」といった会話が聞こえる。パンフによれば、このテープを預かったのは日本の映画評論家、草壁久四郎というからこれもすごい。

彼らは北朝鮮で映画を作り、欧州の映画祭にも参加している。草壁氏が会ったのはそんな時のようだが、日本語のインタビューも出てくるのは、彼によるものだろう。申監督は戦時中に日本に留学していたので、日本語が実に達者だった。

彼らは結局、1986年に滞在先のウィーンで米国大使館に駆け込み、亡命を図る。しかしその後韓国では半分スパイ扱いだったという。私は彼らが北朝鮮やアメリカで作った映画を全く見ていないが、ぜひとも見てみたい。

このドキュメンタリーにはテレビの再現ドラマのような部分もあり、全体にあまり洗練されてはいないが、それでも北朝鮮の闇を照らす必見の作品だと思う。

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