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2016年9月 7日 (水)

これで最後か、ベネチア映画祭:その(5)

コンペの作品でまだ触れていない映画について、忘れないうちに書いておく。フランソワ・オゾンの「フランツ」は、第一次大戦直後のドイツを中心に、同世代のドイツ兵と戦ったフランスの若者アドリアンと、戦争で婚約者フランツを亡くしたドイツ女性アンナの恋愛を描く。

いわば歴史ものの大作でかつ半分はドイツ語で、さらに白黒をベースにセピアの色彩。こうした困難な設定をオゾン監督はいかにも器用に演出する。戦後のドイツにおけるフランス嫌いや、フランスにおけるドイツへの反感も具体的な場面を使って克明に描く。

アドリアンはフランツの親友として、アンナやフランツの両親と仲良くなる。そのうちに隠された真実が露呈して、アドリアンは去ってゆく。アンナはフランスにアドリアンを探しにゆき、そこで予想外の事実を知る。いささか無理のある込み入った設定だが、オゾンの演出は周到で最後まで飽きさせない。

オランダのマーチン・クールホーヴェン監督の「ブリムストーン」Brimstoneは、期待せずに見たがかなりの出来だった。全体が4部構成で、最初は口のきけない助産婦のリズ(ダコタ・ファニング)が、新しい牧師(ガイ・ピアース)を見て震え上がるところから始まる。

第2部でその後が描かれ、第3部でその前の話に戻り、第4部で第1部の続きが描かれる。全体に西部劇やホラー映画的な要素が散りばめられており、残酷な場面は多いが直接は見せないので見ていられる。何より全体の過去現在を行き来する構成の妙に、思わず最後まで乗り出して見てしまった。

この2本に比べると、デレク・シアンフランス監督の「海のなかの灯」The Light between Oceansは、いささか精彩を欠く。第1次大戦からオーストラリアに帰ったトム(マイケル・ファスベンダー)は、離島の灯台守となる。妻(アリシア・ヴィキャンデル)と出会って幸せな日々を送るが、子供ができないことからおかしな方向へ向かう。

途中からレイチェル・ワイズも加わって、3人のドラマは緊密にしっかり構成されているけれど、物語も演出もちょっと古臭い気もする。今年は特に多様な映画が並んでいるので、こうしたオーソドックスな映画は不利かも。この監督は『ブルー・バレンタイン』が鮮烈だったので、なおさらか。

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