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2016年9月27日 (火)

『シン・ゴジラ』について、いろいろ考えた

やっと、『シン・ゴジラ』を見た。当たっているようだし、何よりこの映画をめぐって話題沸騰らしい。日本にいなかったので、何が話題なのかはわからないが、見ておもしろかったのは事実。そのうえ、確かに語りたくなる。

まず、ゴジラの姿が異様だった。最初に出てきた小さなゴジラはチャチ過ぎて、これはゴジラではなくて、本物は後から出てくると思ったくらい。次に大きくなったゴジラは、妙に怖い。およそ非人間的で、完全に人間の敵だからびっくりした。

次にヘンだったのは、米国大統領特使を演じる石原さとみ。日系人という設定だが、どう見ても滑稽で全く現実味がない。日本の政治家や官僚がこの種のエンタメ映画にしてはリアリティを持って演出されているだけに、落差が大きい。あの英語と日本語のチャンポンは本当に恥ずかしい。

それから一番嫌だったのは、結局は日本の若い政治家や官僚には希望があるという終わり方をしたこと。途中で亡くなる首相も官房長官も、臨時代理首相も最終的にはいい人として描かれているし。結局、自衛隊が米軍と協力してゴジラに立ち向かう形を取るとは。

もちろん自衛隊の協力なくしては戦車や戦闘機のシーンはなかったとはいえ、あまりにも今の政府の立場を代弁している。パンフを見て、脚本・総監督の庵野秀明や監督・特撮の樋口真嗣を始めとして多くのスタッフが私の世代であることを知った。実はゴマすりの世代なのか。

面白かったのは政府の動揺ぶりを、演劇畑の個性派俳優や映画監督まで駆使して実にハイテンポにまとめたこと。これこそ日本のアート系俳優の「顔見世興行」だった。政府内や防衛省内の意思決定過程を、膨大な情報量で細かく見せてゆく手際は心地よい。

防衛大臣の余貴美子が「総理、いいですね、攻撃しますよ、決断してください」と総理の大杉漣に迫るシーンなんて、本当におかしい。官僚や学者の天才たちが集まる対策本部の塚本晋也監督を始めとする人々の変人ぶりも楽しいし。

個人的に一番良かったのは、蒲田、品川、鎌倉、目黒など具体的な地域を写しながら、逃げ惑う人々を克明に描いたこと。もちろん3.11を思わせるが、ある種の昭和さえ感じさせる東京の細部をこれほど細かに描いた映画はないのではないか。都市の崩壊と住民の混乱のシーンは、ゴジラとの戦いよりも迫力があった。

ゴジラを倒すのに、山手線と京浜東北線が両側からぶつかるなんて、わくわくした。そのあとのクレーンを使った薬物作戦が妙にチャチなのも、日本的でよかった。その本部がなぜか日本科学館の屋上というのもリアル。さてこうなると、その手前にある皇居はどうなるのという気もするが、もちろん映画では皇居や天皇には一切触れていない。

ひょっとしてこうした東京ネタは、地方の観客にはわからないのではないか。あるいは、壊れゆく東京の姿は、地方にとってはざまあみろ、か。

そんなこんなで、いろいろなことを考えさせるのだから、いい映画に違いない。私は昨日の1年生向けの授業で、必ず見に行くように勧めた。

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