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2016年9月 6日 (火)

これで最後か、ベネチア映画祭:その(4)

今年のベネチアは、コンペ外の数を断然に増やしている。いわゆる「アウト・オブ・コンペ」がコンペと同数の20本。さらにキム・ギドクがオープニングを飾った「ジャルディーノの映画」に8本。パオロ・ソレンティーノの「若き法王」The Young Popeのようなかなりの話題作もこの28本に含まれる。

「アウト・オブ・コンペ」に、ドキュメンタリーが7本もあるのも興味深い。そのうちウルリヒ・ザイデル監督の「サファリ」Safariを見た。この監督は日本でも劇映画の『パラダイス』3部作が公開されているが、去年ベネチアで見たドキュメンタリー「地下室で」には驚いた。去年書いたように、地下室で変態行為を楽しむ人々を次々に出したから。

「サファリ」は、アフリカのジャングルで牛やキリンやシマウマの狩りを楽しむドイツやオーストリアの人々を追いかける。ごく普通の人々がお金を払って参加し、現地の会社のセッティングで狩りをする。うまく命中すると獲物の前で写真を撮り、後で剥製にしてもらい、自宅に飾る。

冒頭に値段を夫婦で話すシーンが出てきたが、牛は650ユーロとかキリンは1200ユーロとか。自分たちは楽しみ、アフリカ人には雇用を生み出しているという者、銃が命中した時には全身にアドレナリンが流れるという若者、地球全体を考えれば悪いことではないという者。

ただし場所を探して連れて行くのはドイツ系の会社に雇われたアフリカ人だし、命中した後に解体して剥製にするのもアフリカ人。つまりはいいとこ取りで動物の死と向き合っていないが、それを言えば毎日肉や魚を食べている私もあまり違わないことに思い至る。これは日本で上映したら、かなり話題になるのではないか。

ドキュメンタリーではクラシック部門に出ていたクレール・シモン監督の「入試」Le concoursを見た。この部門はいわゆる古典の復元版を21本上映しているが(邦画は『鬼太鼓座』と『七人の侍』)、それと別にドキュメンタリーが10本上映されていて、これはその1本。

ほかのドキュメンタリーは巨匠を追ったものなどが多いが、これはパリの国立映画学校の入試を追ったもの。つまり未来の映画監督を撮ったと言える。論文に始まって、監督、脚本、製作、演技、配給・興行など各部門の面接が行われる。

おもしろいのは、外部の人間に採点や面接を頼んでいること。論文の採点は4人ほどが見て平均を取るが、20点満点で6点と19点など点が離れている学生については、再度議論する。実際の面接の場面とその後の審査員たちの議論も見せるのでおもしろい。

「こんな感受性豊かな若者は見たことがない」と言う審査員に「あれはナルシシストなだけ」。「フレッシュな印象がいい」と言うと「22歳で若いだけよ」。正直なところ自分の大学の入試とあまりに似ていたので、他人ごとではなかった。ラストは合格者たちの記念写真。

こちらの映画も日本で公開したらきっとウケると思う。ちなみに監督はしばらく前にここで書いた「夢が作られる森」を作った女性で、フランスではよく知られたベテラン。

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