パリは移動祝祭日:その(1)
32年前に1年パリで過ごしたことは、その後の私の人生に大きな刻印を残した。つまりは、ヘミングウェーの「もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ」というやつ。今回の半年も、長く尾を引きそうだ。これからも時々、パリについて書く。
パリ最後の日は、帰国の準備で忙しかった。前日も前々日もシネマテークで調査の日程を組んでもらっていたから。そして夜は1週間連続で宴会ばかり。
夜便で帰るから、アパートを20時に出ればよかった。その前に18時に大家さんが来て、アパートを点検する。だから、朝からスーツケースを詰めながら大掃除をすることになった。まずは、マットレスと掛け布団と枕とソファのシーツをすべて洗った。
乾くのに時間がかかりそうなので、近所のコインランドリーに行って1ユーロで乾燥機に入れた。それからアイロン台を出してアイロンをかける。前に洗ったシーツもついでにアイロン。シーツによってやや黄ばみもあったが、何とかいい感じになった。
実は数日前のパーティでソファにワインをこぼした人がいて、シーツが真っ赤に染まった。「私がやりました」と誰も言わなかったから、たぶんフランス人だろう。これは翌日染み抜き剤をしっかりつけて2度洗ったら、ほぼ真っ白になったので安心した。
最後にアイロンを片付けていたら、指に火傷をしてしまった。これは飛行機の中でずいぶん痛んだし、今でも左手親指と中指に痕が残っている。
それから床に掃除機をかけて、雑巾がけをした。疲れるとスーツケースを詰めた。途中で昼ご飯を食べに出て、再開。備え付けの食器をすべて洗い直した。冷蔵庫の電源を切り、氷をとかす。
スーツケースがパンパンになったが、どうにか収まった。すべてが終わったのは5時過ぎ。あとは再点検をして、気になる場所を雑巾で拭く。6時頃にはほぼ完璧に仕上がった。
大家さんは6時15分頃にやってきて、まず電気とガスの目盛りを確認して、電気代とガス代を算出した。それを銀行に振り込むように伝えると、すぐに帰ろうとした。私が思わず「あの、点検はしないのですか?」と聞くと、「あなたが大変綺麗に使っているのは、すぐにわかりました。これで完璧。鍵は郵便受けに入れておいてください。では、ボン・ボヤージュ!」
丸一日必死で大掃除をした私は、大家さんがアパートを出ると、へなへなと座り込んでしまった。やはりフランス人はいいかげんだ。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 飛行機のトラブル(2026.09.07)
- 美術と映画をめぐって(2026.08.26)
- 本を売る(2026.08.20)
- 人生の僥倖(2026.08.09)
- いつの間にかイタリア映画の専門家に(2026.08.07)


コメント