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2016年10月27日 (木)

乗り気のしない東京国際映画祭:その(2)

そして、東京国際映画祭が始まった。例年、コンペの7、8割くらいとほかを3、4本見るが、今年はコンペをすべて見ることにした。実は朝日新聞のネットでやるという星取表に参加することにしたから。「朝日」購読者はわかると思うが、今年はやたらにこの映画祭の記事が多い。

それは今年から「朝日」が「メディアパートナー」になったから。去年までは長年「読売」だったが、なぜか「朝日」に代わった。だから記事が増え、ネットでもやるのだろう。

オリンピックやワールドカップもそうだが、「メディア・パートナー」とは本来新聞にとって自殺行為だと思う。自由に書けなくなるから。もちろんオリンピックなどはメディアが大金を払ってその地位をもらうが、この映画祭なら逆に広告を多くもらう程度だろうが。カンヌやベネチアには実に多くのスポンサーがつくが、「メディア・パートナー」は中継をする衛星放送くらいだと思う。

今年のカンヌは、とりわけ受賞結果を新聞各紙がここまで書くかと言うほど猛烈に非難した。映画祭と新聞にはこんな「緊張関係」が欲しい。

そうは言いながら、星取表を引き受けてしまった。星を1つから5つまで付ける。150文字以内の文章つきなので、せめて辛口にいこうと思う。朝日新聞デジタルで今日の昼頃からアップ予定らしい。ほかにも秦早穂子さん、林瑞絵さんと朝日の石飛、佐藤両記者が参加するはず。

そんなこともあって、今年は初めて先週の内覧試写に参加し、コンペの3本を見た。昨日は2本見たので、もう5本。とりあえず、その中で一番良かったのは、フィリピンのジョン・ロブレス・ラナ監督の『ダイ・ビューティフル』。

男性に生まれながら女装をし、トランスジェンダーの美女コンテストに出演を続けるトリシャの生涯を温かい視線で描く。冒頭の少年時代から彼女のお葬式へ飛び、さらに少年時代から家出、そして恋愛、いくつもの美女コンテスト、お葬式までの日替わりの化粧と巡る。

もちろん同じフィリピンでも、今年のカンヌのブリランテ・メンドーサ監督やベネチアのラヴ・ディアス監督の作品のような圧倒的な驚きはない。しかし一見メロドラマに見えながら、自由に時間を飛びながら一人の人間の生涯を巧みに展開する力は相当のもの。

そういえば、普通カンヌなどは公式上映前に文章を書くことは、SNSやブログでも固く禁じられている。「エンバーゴ」と呼ばれるが、この映画祭では何も言われない。まあ、これを読んで見ようという人が増えればいいのか。

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コメント

朝日新聞の石飛です。メディアパートナー、おっしゃるような危険はあると思います。ただし、私は辛口でいきますよ! 日本のメディアは、朝日も含めて西洋の映画祭をありがたがりすぎます。地元の東京国際映画祭の記事が少なすぎるとずっと思っていました。東京国際映画祭が盛り上がらないのと、メディアの冷笑的な態度は、鶏と卵の関係という側面があります。メディアパートナーという役割を利用して、よいしょではなく、建設的な批判を含めた記事をたくさん出していきたいと思っています。星取表、ぜひご注目ください。そして、建設的な批判をよろしくお願いいたします。

投稿: | 2016年10月27日 (木) 08時54分

私たち作り手は批判されるほど心騒ぎ、喜んでいます。批判されないほど悲しいことはありません。
批判という目安がないと進化していきません。
思うことは全部書いてください。

投稿: | 2016年11月 2日 (水) 07時22分

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