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2016年10月18日 (火)

『SCOOP!』を楽しむ

大根仁監督の『SCOOP!』を劇場で見た。『バクマン。』ほどの驚きはなかったが、相当に楽しんだ。このテレビ出身の監督は、現代の日本社会をエンタメとして撮らせたらピカ一ではないかと思う。

何より、マスコミの内部を描かせたらうまい。もちろん『バクマン。』の漫画雑誌編集部も良かったが、部数に浮かれて週刊誌の編集部全体にアドレナリンが溢れる今度の方がずっとおもしろい。私は週刊誌の編集部にいたことはないが、新聞の文化部でさえも大きな出来事があるとある種の熱狂が支配するので、懐かしかった。

今回の映画は、そのアドレナリンの頂点を芸能カメラマンの撮影シーンに置く。主人公のカメラマン、静を演じる福山雅治が助手役の二階堂ふみと組んで、隣のビルで花火を打ち上げて高級ホテルの不倫カップルが窓を開ける様子を撮影し、バレると花火を使いながらカーチェイスで逃げ回る。

撮影が不可能な現場検証に、ラグビーのように警官に突撃するデスクがいて、さらに福山は大声を挙げてカメラを持って、現場に突っ込む。それを撮影する二階堂。その情動の発露、その昂揚感といったら。

本当は花火で追いかけてくる車を追い払うことはできないだろうし、現場検証であのような場所に福山と二階堂が隠れることは無理だろう。それでもそのテンションの高さが全体を引っ張る。終盤の福山と二階堂のカラミや福山とリリーの不思議な道行きは、その緊張がもはや続かない感じもあるけれど。

何より、風俗通いをする福山の下品さは、今の出版社にはない。フィルムカメラで撮るカメラマンも、報道にはいない。すべてが、昭和な感じの古き良き時代のマスコミでやりすぎなくらいなのだが、それでもこの魅力は何だろうか。

そしていつもヤクをやっているようなリリー・フランキーが凄まじい。骸骨の並ぶバーで福山を待つシーンや、二階堂が襲われるのを助けるシーンにぞくぞくする。

大根仁には、いわゆる大御所監督にも最近のインディペンデントのアート系監督にもない、とんでもないイキの良さや心地よい懐かしさが感じられる。

付記:最初になぜか「二階堂ふみ」ではなく、「宮崎あおい」と書いていた。「すーさん」からのご指摘で訂正した。

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コメント

宮崎あおいではなく二階堂ふみですよ!
よく似てるとは言われますが。

投稿: すーさん | 2016年10月18日 (火) 09時59分

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