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2016年10月 4日 (火)

生暖かい日本で:その(4)

先日、銀行のキャッシュ・カードでお金をおろそうとして、暗証番号を間違った。考えてみたら、半年間これでお金をおろしたことがなかった。このカードだけはほかのカードとは違う4ケタを使っていたのだが、それが思いつかない。

3通りの番号を入れて、どれも失敗した。いったんやめて電車に乗ったら、急に思い出した。そこで目的地で駅から出たところのコンビニで無事に引き出すことができた。4回目はもう受け付けてくれないかと思ったから、助かった。

似たようなことがもう一つ。大学についてエレベーターに乗ったが、研究室があると思って5階で降りたら間違いだった。4階だったのだ。これはたぶん昔の職場が5階だったからだが、大学に移ってもう7年半もなる。

何ということだ。パリのアパートの入り口のアルファベット交じりの5ケタのコード番号は、まだ記憶にあるのに。それほどまでに、パリの半年にすっかり染まっていたということだろう。

染まるというよりも、全身で必死で生きていた、あるいは生き延びていたので、昔の記憶はいつの間にか消却していたのだろう。とにかく、パソコンもスマホもパスポートもクレジットカードもなくさず盗まれないようにと考えるだけで、気が重かった。

あるいは、この言葉はフランス語で何というのか、これをするとフランス人にどう見えるか、これを着たらヘンに思われるか、そんな心配ばかりしていた。

そういえば、まだ時差ボケがあるような気がする。さすがに一週間もたつので、時差ボケではないか。正確に言えば、従来の早寝早起きがさらに拍車がかかって、10時には寝て、朝の4時過ぎには起きている。

そうして1日中眠い。なんだか、パリの疲れが続いている感じ。たぶんこれから毎日どんどん授業をやって、論文を書き、友人たちと飲みに行ったりすれば、自然に日本のリズムは取り戻すのだろうか。

このひと月ほどは、リハビリの時間なのかもしれない。大学や机の上の膨大な手紙や印刷物を整理しながら、これからの生き方について、ゆっくり考えてみようと思う。

そういえば、よく「もう帰って来たのですか。あっという間でしたね」と言われる。日本でいつものように暮らす友人たちにとってはそうだろうが、私にとってはそれなりに長く重い、非日常だった。

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