« 『牝猫たち』の現代性 | トップページ | 『海は燃えている』のシンプルな力 »

2016年11月21日 (月)

九州弁の話:その(1)

東京に住んで、今年で30年になる。大学まで福岡で、卒業してから東京に住んでいる。最近は東京出身と思われるほど、私の話す言葉から九州弁のアクセントもなくなった。しかし、時おりふっと蘇る。

先日、珍しくテレビを見ていたら「くまモン」が子供たちに「がまだせ!」と言っていて、笑ってしまった。「がまだす」とは九州特有の言葉で、ネットで調べると熊本を中心に、佐賀、長崎、福岡南部で話すらしい。長崎の「雲仙岳災害記念館」を「がまだすドーム」というのも出て来た。

意味は「頑張る」「精を出す」というものだが、私のイメージは少し違う。「隣の山田さんは、がまだして米作りよらす」という時、山田さんは異常にがんばっている、という感じがある。ほかを出し抜いて、自分だけ金を儲けたいような、ちょっと嫌な感じなのだ。

だから人に向かって「がまだせ」とはあまり言わない気がする。むしろなりふり構わず頑張り過ぎる人を茶化すような、シニカルな印象を持っている。

「がまだす」の語源は「我慢出す」らしいが、不動明王が悪魔を降伏させる時の「降魔(ごうま、がま)の相」を「出す」という仏教用語に由来する説もあるらしい。こうなるとよくわかる。私の中では、尋常ではないエキセントリックな表情が「がまだす」と結びつく。

私の母は熊本出身なので、その語源に近いニュアンスを持って来たのではないか。確かにいわゆる「博多弁」では使わない気がするが、どうだろうか。私は高校を久留米市、大学を福岡市で過ごしたが、その過程でもう「がまだす」という言葉は封印した気がする。

だから今頃になって「がまだす」という言葉が出て来た時、涙が出るほどおかしかった。ひょっとすると、佐賀や長崎では「がまだす」がもっと軽くなっているのかもしれない。実は九州弁は、相当に違う鹿児島は別にしても、県ごとに地域ごとに微妙に違う。

どこでも通用する九州弁は「よか」だろうか。「よか」はもちろん「いい」という意味だが、「よかよか」というと、「大丈夫だよ」という慰めの言葉になる。あるいはそれは、九州人のおおらかさというか、むしろ大ざっぱさを示す。「あの人は何でもよかよかですけん」

今頃になって、時々九州弁が浮上する。また何か出てきたら書きたい。

|

« 『牝猫たち』の現代性 | トップページ | 『海は燃えている』のシンプルな力 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

確かに、がまだすは、博多では聞かんね。
よかよかは、もう要らんばい、という意味も 有るけん、やおいかんねー。
パリでがまだしたけん、中州で一杯やろか。
お疲れ様。

投稿: 木下 | 2016年11月22日 (火) 00時39分

佐賀では「がまだす」とは言わなかったね。
それだと「きばる」かな。「山田さんはきばって田んぼばしよらす」。
「がばだす」のがめついニュアンスだと「田んぼばしてかせぎよらす」だろうか。
私は、佐賀でも佐賀市より西の方言だから、筑後に近い地域はわからんけどね。
方言はなかなかおもしろい。

投稿: 久保 | 2016年11月23日 (水) 20時50分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/64522512

この記事へのトラックバック一覧です: 九州弁の話:その(1):

« 『牝猫たち』の現代性 | トップページ | 『海は燃えている』のシンプルな力 »