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2016年11月 4日 (金)

乗り気のしない東京国際映画祭:その(6)

映画祭の最終日には、チケットを買って『アジア三面鏡:リフレクションズ』を見た。3人の監督のオムニバスだが、何といってもフィリピンのブリランテ・メンドーサ監督が日本のお金で撮ったらどうなるか、興味があった。

結果としては、さすがにメンドーサの「死に馬」は一番良かった。次が行定勲監督の「鳩」で、あまり成功していなかったのがカンボジアのソト・クォーリー監督の「ビヨンド・ザ・ブリッジ」。実は映画はこの順番に並んでいた。

「死に馬」は1980年代に日本に渡り、今は北海道の牧場で働くフィリピン人の中年の男マーシャルを描く。「ばんえい競馬」という、橇を馬に引かせる競馬が冒頭に出てくるが、根岸吉太郎監督の『雪に願うこと』(2006)を思い出した。この映画は東京国際映画祭でグランプリを取っているが、メンドーサ監督はひょっとして見ていたのではないか。

マーシャルは違法滞在で逮捕され、本国に強制送還される。バスや車を乗り継いで故郷に帰ると、甥の家族以外は誰もいなかった。遠くに住む息子は憎んでいるから会わない方がいいと言われる。結局、競馬の馬舎にたどり着く。

淡々と描かれるのは、呆然と立ちすくむ孤独なマーシャルの姿だけ。けれど見ながら、彼が日本で過ごした30年に思いをはせた。いったい楽しかったのか、お金は少しは蓄えたのか、映画は何も説明しないが、一人のフィリピン人の人生をくっきりと見せていた。

「鳩」は津川雅彦演じる認知症の老人が、マレーシアで暮らす話。息子(永瀬正敏)は月に一度会いに来るが、父親は誰かわからない時もある。現地で雇った3人のメイドが世話をするが、老人はとりわけ若い女性と心を通わせる。

丁寧に撮られているし、津川も永瀬もいいのだけれど、全体に「できすぎた」感じか。シンプルなメンドーサの映画を見た後のせいかもしれない。

「ビヨンド・ザ・ブリッジ」はカンボジアに橋を作った日本人社長の感傷的な物語。彼の70年代の青春が重なるが、まるでカラオケのビデオを見ているようで、つらかった。

このシリーズはあと2本あるらしい。現在、世界の映画祭は、製作を助成したり、若い監督を育てるプログラムを増やしているので、ようやくこの映画祭もという感じか。国際交流基金が全額製作費を出しているようだが、全額ではなく助成金を多くの監督に出して東京でプレミアをやる方式の方が、誰にとってもずっといいのではないか。

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